また、2019年5月に私がかかわった「ブレス・ハザードプロジェクト」という口臭の実態調査でも興味深い結果が得られました。首都圏214人の男女を対象に口臭測定器を使って口臭の程度を調べたのですが、1日3回以上歯を磨く人と、2回以下の人での比較結果では、なんと3回以上磨く人のほうが口臭のある人の割合が高かったのです。これは歯磨きの回数が口臭の改善には必ずしも直結しないことを示唆しています。

 口臭の原因の87%は食べかすによって増殖する口の中の嫌気性菌という細菌です。つまり、口臭においてもセルフケアだけでは限界があるのです。

 なお、定期検診やメインテナンスは自費で受けるのが基本です(歯周病の場合、治療後に歯周ポケットが4ミリ以上、残ってしまった場合はひと月に1回のメインテナンスに保険が使えます)。歯科医院によって違いますが、料金は6千~1万5千円くらいでさまざまです。治療時間や治療内容も少しずつ違うので確認しましょう。

 治療内容については患者さんの口腔ケアをトータルで行っているところを選ぶべきです。むし歯や歯周病のほか、かみ合わせなどに異常がないかどうかを調べる歯の健診、歯みがき指導など自宅でのケアの方法(間違った方法、みがけていないところをちゃんと見つけて直してくれる)、食事の指導を含む生活指導、予防のためのフッ素塗布などです。なお、少なくともPMTCだけで終わってしまうような歯科医院は避けてほしいと思います。

 理想的な通院頻度は3~6カ月に1回程度とされています。

 自費であるため、料金を「高い」という人は多いようですが、むし歯が進行したり、歯周病がひどくなってから治療をするとトータルではこの何倍もの費用がかかります。歯を削られたり、場合によっては歯を失うというデメリットもありますね。

 歯科先進国のスウェーデンでは法律で定められていることもあり、9割以上の人が定期的に歯のメインテナンスに通っています。その結果、ほとんどの人が70歳になっても若い時とほぼ同じ歯の本数を維持できています。

 ぜひ、日本にも当たり前のように定期検診やメインテナンスに通う習慣が根づいてほしいと願うばかりです。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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