一方で、700万円以上の回答者は約1割を占め、最高額は3000万円。1000万円以上も複数いた。「平成28年度東京都福祉保健基礎調査」によると、東京都の高齢者のみの世帯で年収700万円以上は8.3%なので、平均と大きな差はないともいえる。サンプル数が少なく、年収はプライバシーに関することなので回答拒否も多いことから統計資料としては参考程度にとどまるが、アンケート結果から見えてくるのは、全共闘世代の元活動家の間でも「格差」が存在するということだ。

 家庭の構成については、約9割が一度は結婚を経験しているか、同居するパートナーがいると回答している。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、全共闘世代が該当する2000年時の50歳時未婚率は男性13%、女性6%なので、おおむね同世代の平均に近い。

 続いて、政治的な思想の傾向はどうか。支持政党については52%が立憲民主を支持し、続いて自民が8.8%、共産が6.8%。報道機関の世論調査では、自民党の支持率はおおむね30~40%で推移している。近年の傾向として、60歳代は他の世代と比べて自民の支持率が低い傾向があるが、全共闘世代ではやはり野党支持者が圧倒的に多い。

 意外な結果を見せたのは、天皇制についてだ。革命や社会変革を志した若者時代、天皇制に反感を持っていた人が多かったことは想像に難くない。ところが、平成時代の天皇(現在の上皇)については66%が「評価する」と回答した。

 上皇ご夫妻は、学生運動が下火になった頃の75年に沖縄を初訪問した。その時にはひめゆりの塔で献花をした直後、新左翼系の過激派から火炎ビンを投げられた。しかし、その日のうちに「払われた多くの尊い犠牲は一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、一人一人、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません」との談話を発表し、犯人を批判することはなかった。その言葉通り、上皇さまは皇太子時代に5回、平成の30年間で6回の計11回、沖縄への訪問を続けた。国民の統合の象徴として平和を祈る活動を続けた平成時代を通じて、元活動家の中でも天皇制への思いに変化が生まれたのかもしれない。

次のページ
後世に伝えたいこと