今から半世紀前、日本には「革命」や「社会変革」を目指す学生があふれていた。ベトナム反戦運動などをきっかけに1968年から69年にかけて、大学で授業のストライキや構内のバリケード封鎖が相次いだ。東大安田講堂も学生に占拠され、69年1月には警視庁の機動隊が突入し、封鎖を解除した。いわゆる「東大安田講堂事件」である。その後、69年9月に全国78大学が参加して「全国全共闘」が結成される。いつしか、その若者たちは「全共闘世代」と呼ばれるようになった。
来るべき社会の理想像を熱く語りあった若者たち。一方で、卒業後は長い髪を切って就職し、「モーレツ社員」と呼ばれながら高度経済成長期とバブル時代を走り抜けた。そのことから、全共闘世代は日本が最も豊かな時代を生き、老後を満喫する「逃げ切り世代」と呼ばれることもある。最近では、学生時代に鍛えた論破術で人を言い負かすことは得意でも、組織ではお荷物扱いされて「老害」と批判されることも多い。
しかし、ある世代をひとくくりにして、単純な印象から評価をすることはおかしなことだ。どの世代でも、性格の悪い人もいれば、尊敬されている人もいる。全共闘世代には、闘争に敗れた後に故郷に戻り、次なる夢として医療や農業などの分野で地域を支えることに人生を捧げた人も多い。もちろん、70年代に入って学生運動が下火になっても活動を続け、現在は獄中で過ごしている人もいる。
そこで、戦後の一時代をつくった全共闘世代の実像に迫るため、プロジェクトが立ち上がった。呼びかけ人となったのは、全共闘運動に関わった有志で、かつての仲間たちに75問にのぼるアンケートを依頼した。設問もユニークで「全共闘あるいは何らかの政治社会運動はあなたの人生観を変えましたか」といったものから、現在の年収や資産、天皇制や現在の政治に対する態度、そして辞世のことばもたずねている。
プロジェクトは「全共闘運動50周年『続全共闘白書』編纂実行委員会」と名づけられた。「続」とついているのは、25年前に同様の企画を実施し『全共闘白書』(新潮社)として出版されたことがあるためだ。同プロジェクトの事務局を務める前田和男さんは、こう話す。