「全共闘世代の大半はすでにリタイアしています。過去の経験を『若い時代の美しい話』にするのではなく、失敗や全共闘世代の矛盾の記録も後世に残し、一つの時代を生きた者たちからの教訓としてほしい。いわば、私たちの“遺書”を残すということです」

 回答は現在も受付中で、続々と興味深いものが集まっている。元日本赤軍の重信房子氏やよど号ハイジャック事件で国際手配され、現在も北朝鮮で暮らす小西隆裕氏からも回答が寄せられた。

 いったい、全共闘世代とはどんな人たちなのか。6月3日時点の中間集計から、その“実像”を紹介しよう。なお、回答者の全体像として、設問の「全共闘運動あるいは何らかの政治社会運動にどのような形で参加しましたか」では、「活動家として参加」と回答した人が6割を占めている。この人たちは学生運動に確信派として参加したという前提で、回答をご覧いただきたい。

 まずは年収から。日本で65歳以上の高齢者世帯の平均所得は308万円(平成30年版高齢社会白書)、全世帯の平均所得は545万円となっている。69年の安田講堂事件の時の学生運動家たちを全共闘世代の中心と考えると、回答者のほとんどが70歳前後の高齢者だ。回答を見てみると、やはり年金暮らしの人が多く、全体の約4割が年収250万円以下。100万円以下と答えた人も複数いた。

 ちなみに、麻生太郎財務相が受け取りを拒否したことで問題となっている「老後が30年続けば、約2000万円が不足する」との金融庁報告書は、高齢者夫婦で年金を含む年収が約250万円の世帯が想定されている。全共闘世代はまだ「高齢者」の仲間入りをしたばかり。年収250万円以下の人たちは、長生きをするなら、あと2000万円以上を何らかの手段で稼がなければならない。もちろん、現在の年収が低い人はさらにその額が大きくなる。

 251万~400万円の層も全体の約3割を占める。この層には非常勤職員などで年金以外の収入を得ている人も多い。ただ、年齢を重ねると働く場所は少なくなっていくことが予想されるので、数年後に250万円以下に下がってしまう人もいるだろう。年金財政の危機は、全共闘世代を直撃している。

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全共闘世代は天皇制をどう考えているか