それでも、救いはともに打撃が小さくなっていないこと。小園はここまで4本塁打を放っており、根尾も時折ではあるが左方向への大きな打球を放っている。チームの期待が大きく、多くの打席数、守備機会を与えられているうちに、攻守の確実性をアップさせたい。またもう一人のドラフト1位、太田は3月の教育リーグで死球を受けて右手を骨折し、今月ようやく実戦に復帰した。まずは焦らずにしっかり故障を治すという段階だ。

 「ドラ1」の4人が苦しんでいる一方、下位指名ながら飛躍を感じさせる選手もいる。特に目立つのが濱田太貴(明豊→ヤクルト4位)、山口航輝(明桜→ロッテ4位)、山下航汰(健大高崎→巨人育成1位)の3人だ。

 濱田、山口の二人はチームにとって待望の右の大砲候補。ともに開幕直後は出番が少なかったが、二軍で徐々に打席数を増やし持ち前の長打力を発揮して3割近い打率と4割前後の長打率をマークしている。濱田は高校時代は打撃に特化した選手という印象が強かったが、ここまで4盗塁をマークしているように、プロでは積極的に走る姿勢を見せているのも好材料だ。

 そして、さらに強いインパクトを残しているのが育成選手の山下だ。育成選手の多い巨人の場合、高卒ルーキーは二軍の試合に出場するのも簡単ではないが、キャンプからアピールを続けてレギュラーの座をつかみ、ここまでリーグトップの打率.308をマークしているのだ。健大高崎時代は70本を超える通算本塁打をマークしていながら守備面が低く評価されて育成での指名となったが、ここまでの活躍は見事という他ない。ボールを近くまで呼び込んで強く押し込めるため、プロの変化球にも対応できている印象だ。この活躍が続けば、早いタイミングでの支配下昇格も十分に考えられるだろう。

 いずれにせよ彼らのルーキーシーズン、プロ野球生活はまだ始まったばかりである。“ドラ1選手”の巻き返し、また山下に次ぐ下位指名選手の台頭が今後も見られることに期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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