相手からもたらされる情報は本当か、それとも話半分か。あるいはやる気・元気の有無などの相手の心理状態……。こういうものは、メールやMessengerでは伝わってきませんが、電話だから感じ取ることができるのです。

 特に重要な交渉の場合は、相手の情報を少しでも沢山仕入れることができる電話にするに越したことはありません。例えば、相手は本当にやる気があるのかどうか? 誠意を感じるかどうか? ちょっと気まずそうにしてないか? 等々です。

 重要な交渉においては、相手の時間を奪ってでもやる意義は大きいです。

 もちろん相手には「何時頃に電話をかけてもよろしいでしょうか?」とお伺いを立てます。これに対する相手の対応にも、重要な情報が満載です。立場が悪く、たくさんの情報を与えたくない場合は「今日は電話に出られない」と逃げるでしょうから。

 政治家は、電話が多い傾向にあります。彼らはメールを書いている時間がないし、メールを記録として相手に残されることも嫌なので、電話が多いのだと思います。

 また政治家こそ、相手の声色、声のトーンや音量で相手の本気度や情報の真偽を確かめるプロなので、自ずと電話が増えるのでしょう。

 最も重要な話は、直接会って目と目を見合って行います。しっかり相手の顔を見ると、声以外の情報が沢山読み取れます。目の動き、体の姿勢、貧乏ゆすりなどしてないか、もちろん生の声色や声の調子、手の動きにも情報が溢れています。

 面談、電話、メール、Messenger、それらの使い勝手の落差にとらわれずそのビジネスの重要度に応じて必要なコミュニケーションのあり方を探るべきだと思います。

 そして何より、「相手を観察してやろう」という心構えでいたら、アホへの電話もちょっとは怖くなくなる気がしませんか?

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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