また、ノルウェーのベルゲン大学のSvanes医師らが、デンマークやエストニア、アイスランドやノルウェー、スウェーデンの女性6317名を対象とした8年間の追跡調査を行った結果、月経不順である女性に喘息や花粉症が多くみられることが分かりました。26歳から42歳の月経不順をもつ女性は、喘息のリスクが1.54倍、花粉症のリスクが1.29倍と高かったといいます。

 花粉症の症状を悪化させる原因も、研究により次第にわかりつつあります。一つ目は、ストレスです。

■花粉症の人はインフルエンザにかかりやすい?

 2008年、米国のオハイオ州立大学のJanice博士らは、花粉症や季節性アレルギーを有する男女28人が参加した試験の結果、精神的なストレスや不安で季節性アレルギーが重症化または長期化しうることが示唆されたと発表しました。他にも、タバコや換気の悪い室内環境における空気の汚染、春先の黄砂なども、花粉症の症状を悪化させる可能性があることが指摘されています。

 2017年3月には、家庭医や小児科医、産科医や皮膚科医、アレルギー専門医や内科医など、米国の23の医学団体で構成されている「気候と健康に関する医療社会コンソーシアム」が、気候変動が健康に与える影響について詳述した報告書を発表。その中で、最も健康を害しやすい人の一例として、花粉や山火事、スモッグなどによる大気汚染による喘息や慢性肺疾患をもつ人が挙げられていました。気候変動による花粉の大気汚染とその健康影響は、世界的な問題の一つだと言えるでしょう。

 さて、花粉症シーズンの前に流行する疾患といえば、インフルエンザですよね。今年は、A型インフルエンザウイルスが猛威を振るい、“流行警報”が発令されたほどでした。インフルエンザと花粉症との関係性についても興味深い研究結果があります。

 2018年の韓国のソウル大学病院のJeon医師らの報告によると、アレルギー性鼻炎をもつ人の粘膜はA型のインフルエンザウイルスが感染しやすいというのです。鼻の粘膜がアレルギー物質によって炎症を起こしダメージを受けていることや、免疫物質の産生量が減少していることから、インフルエンザウイルスが感染しやすくなっている可能性があるのです。

■内服は飛散ピークの2週間前が有効

 花粉の飛散量が多くなる条件は、気温が高いこと、日照時時間が多いこと、そして雨が少ないこと。日本気象協会によると、今年の花粉の飛散量は、北海道は例年を下回るものの、東北から近畿で例年と比べてやや多い地方が多く、中国地方は多い。四国は例年並み、九州は例年並みか多めになると予想されています。また、スギ花粉の飛散のピークは、福岡では2月下旬から3月上旬、広島や大阪では3月上旬、東京は3月上旬から4月上旬となり、飛散する期間が長くなりそうとのこと。昨年は梅雨明けが早く、日照時間も多く、猛暑となったため、花粉がたくさん作られた、ということなのですね。

 そんな花粉症ですが、花粉が本格的に飛散し始める2週間ほど前から内服を始める初期治療が有効だと言われています。早めに相談してみてくださいね。

◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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