甲斐キャノンに続け! (c)朝日新聞社
甲斐キャノンに続け! (c)朝日新聞社

 昨年の日本シリーズの話題をさらったのが『甲斐キャノン』こと甲斐拓也(ソフトバンク)の強肩だ。日本シリーズ新記録となる6連続盗塁阻止をマークするなど広島の機動力を完全に封じ込め、見事にMVPにも輝いて見せた。改めて捕手の抑止力の大きさを感じさせられたが、昨年の優勝チームである広島、西武が機動力のあるチームだけに、それを阻止する捕手の肩は今シーズン更にクローズアップされる可能性が高い。そこで今回は甲斐に続く『キャノン』の候補になりそうな若手の強肩捕手を紹介したい。

 スローイング面でアマチュア時代から圧倒的なパフォーマンスを見せているのが松本直樹(ヤクルト)だ。立教大では厚い選手層の中でなかなか出場機会に恵まれず、4年秋にようやく先発の機会をつかんだものの、リーグ戦での通算成績は20打数0安打と鳴かず飛ばずに終わったが、社会人の西濃運輸では1年目からレギュラーを獲得。1年目の都市対抗ではホームランを放つなど活躍を見せ、2017年のドラフトで7位指名されプロ入りを果たした。

 松本のスローイングの特長はとにかくボールの持ち替えが速いこと。ミットに収まってから瞬く間に右手に握り替えてリリースする様はまるで手品を見ているようでもある。そして、投げるボールもセカンドまで勢いが落ちることがない。2017年の都市対抗ではイニング間のセカンド送球で1.73秒というタイムをマークしているが(著者計測)、これは甲斐のスローイングにも匹敵するものである。プロ入り1年目の昨シーズンは6試合の出場に終わったが、二軍では先発を任せられることも多かった。持ち味のスローイングを実戦でも精度高く発揮できるようになれば、他球団にとって脅威になることは間違いない。現在、正捕手の中村悠平もなかなか成績が安定せず、2番手捕手の井野卓もベテランだけに、スローイングを生かして中村が一気に一軍出場試合数を増やすことも十分に考えられるだろう。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
中学時代から注目の逸材も