◆にわか環境派の安倍総理が義務付けた「非化石電源44%」とは?

 では、尻を叩かれた政府に対応策はあるのか、というと、実は、これが用意されている。安倍総理が、今夏のG20に向けて「にわか環境派」に転身する作戦だ。

 ここでは、16年の伊勢志摩サミットに向けて公約にした温暖化対策がカギになる。CO2排出量を30年度に13年度比26%削減、50年までに同80%削減という目標だ。その実現には、少なくとも、電源別のシェアで、政府の目標である原発20~22%、再エネ電力22~24%を30年度に達成しなければならない。しかし、再エネは、経産省の政策変更もあり、今後高い伸びは期待しにくい状況にある。現状では、再エネ比率は水力の8%を入れても16%程度で、22%達成はかなりハードルが高い。

 ではどうするのかと言うと、実は経産省による周到な布石が打たれている。ほとんど知られていないが、「エネルギー供給構造高度化法」という法律に基づき、電力会社には、30年度に、非化石電源で44%を達成しろということを義務付けたのだ。

「非化石電源」とは、再エネ電源と原発である。これを合わせて44%以上にする義務を電力会社に課した。しかし、これは非常におかしい。政府は原発依存度を可能な限り下げると言っているから、原発についてはなるべく下げるという目標を義務化すべきだ。しかし、原発を再エネと全く同列に扱って、なるべく増やせという真逆の義務をかけていることになる。この話は、経産省が、静かに進めていたので、私の記憶では、大手メディアに報道されたこともない。これは、明らかに、再エネの大きな伸びが期待できないという状況を作ったうえで、「原発をもっと増やすしかない」と言うための布石だ。

 当面は、温暖化対策の重要性を安倍総理がもっともらしく宣伝する姿が、この春以降目に付くようになるはずだ。「国際公約」としての認知度を高め、「絶対に達成しなければならない」と、国民を洗脳する。その後は、再エネの伸びを抑制し、「公約が達成できないが、どうしようか」という問いを投げかける。安倍支持派の大手メディアが、「温暖化国際目標達成に赤信号 再エネ頼みに限界」というような見出しで騒ぎを起こし、途中で「電力会社 エネ構造高度化法の義務達成できず」とはやし立てながら、次第に、「原発切り札に国際公約達成へ」という見出しに代わっていくという展開が予想される。

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スクラムを組み直して最終戦争に出る原子力ムラ