厚生労働省による「毎月勤労統計」(毎勤統計)の不正調査問題が安倍政権の屋台骨を揺るがす騒ぎになってきた。
この記事の写真をすべて見る毎勤統計は統計法という法律で、政府の「基幹統計」に位置付けられ、賃金や労働時間などの動きを示す重要な指標だ。中でも、国民の暮らしが豊かになったかどうかという観点から、労働者1人当たりの現金給与総額や前年同月と比べた変化率の指標は注目度が高く、発表されるとすぐに大きく報道されている。
対象は全国で約3万超の事業所だが、このうち、比較的小規模な従業員5~499人の事業所は約2万4千人と数が非常に多いので、一部の事業所を抽出して実施するが、従業員500人以上の事業所約6千については全数調査を行うことに決まっている。
今回問題になったのは、東京都の調査分だ。都内には、全数調査の対象となる大規模事業所は約1400あるのだが、実際には、このうちの約3分の1しか調査していなかった。しかも、その際、数値の補正をせず、残りの3分の2の大規模事業所が存在しないかのような処理をしてしまったため、その分賃金の水準が低くなってしまった。この不正が始まったのは2004年で、17年まで続いていたが、厚労省は、その事実を昨年末まで公表していなかった。
毎勤統計の数字は、雇用保険、労災保険、船員保険などの各種給付金の算定の前提として用いられる。ところが、この統計が、実態よりも低い給与水準となっていたため、給付金の額も、本来あるべき水準よりも低くなってしまった。
1月18日の政府の発表によれば、この不正により、給付金の給付額が少なくなってしまった人は、のべ2015万人、過少給付分は、総額約600億円に上る。そして、これを支払うための事務的コストは195億円だ。このため、19年度予算案をそれに合わせて修正して閣議決定し直すという事態になった。もちろん、前代未聞のことだ。
■組織的不正・隠ぺいだけでなく、今も証拠隠滅が行われている可能性大
今、一番問題とされているのは、まず、この不正が組織的なものだったのかどうか、もしそうであれば、どのレベルまで(大臣も関与したのか、次官までか、局長までかという話)関与したのか、いつから幹部はこの話を知っていたのかという点だ。
結論から言えば、最初の段階から組織的な不正だった疑いが極めて高い。
例えば、当時、全数調査に近く見せかけるための事務的処理の自動化ソフトが作成されたというが、何故、それが必要なのかを詳しく説明しない限り、予算担当部局の了承は取れない。その過程で、幹部にもこの話が報告された可能性は極めて高いと考えられる。