「カップヌードルミュージアム 大阪池田」で開催中の特別企画展「チキンラーメンの女房 安藤仁子展」の入り口。幼少期からの仁子の写真が並ぶ
「カップヌードルミュージアム 大阪池田」で開催中の特別企画展「チキンラーメンの女房 安藤仁子展」の入り口。幼少期からの仁子の写真が並ぶ

企画展では、仁子の生涯をたどることができる
企画展では、仁子の生涯をたどることができる

仁子の書も展示されている
仁子の書も展示されている

「カップヌードルミュージアム大阪池田」前に建つ安藤百福翁像。百福の手にはチキンラーメンが
「カップヌードルミュージアム大阪池田」前に建つ安藤百福翁像。百福の手にはチキンラーメンが

 2018年10月1日の初回視聴率は23.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、その後も好評のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「まんぷく」。安藤サクラが演じるヒロイン、立花福子(福ちゃん)のモデルは、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を開発した日清食品の創業者・安藤百福(ももふく)の妻、仁子(まさこ)だ。どのような人物だったのだろうか。

【チキンラーメンを手にもつ安藤百福翁はこちら】

「萬平(まんぺい)さん」と、世の中に役立つ商品の開発に取り組む夫、立花萬平(長谷川博己)に呼びかける際の笑顔が印象的な福ちゃん。2010年に92歳で亡くなった仁子も、笑顔が素敵な女性だったという。日清食品ホールディングスの広報部長、大口真永さんは振り返る。

「仁子さんは常に気遣いをされる方で、(生前は)『忙しいでしょう。体に気を付けなさいよ』と、よくお声をかけていただきました。あの優しい笑顔が忘れられません」

 NHKのスタッフから、同社にドラマ化の相談があったのは2017年夏のこと。18年はちょうど「チキンラーメン」の発売60周年。節目を飾るドラマとなった。大口さんは「社内でも話題になっています。ドラマですので史実そのままではないのですが、毎日楽しみながら見ています」。朝ドラを見てから出勤する「まんぷくフレックスもオッケー」という上層部の声もあるという。

 仁子の生涯を紹介する評伝『チキンラーメンの女房 実録 安藤仁子』(安藤百福発明記念館編、中央公論新社)によると、いつも自分のことよりも人のことを気にかけ、細かい心遣いを忘れない仁子は、「観音さまの仁子さん」と呼ばれて慕われた。困った状況に追い込まれても、「クジラのようにすべてを呑み込む。でないと先に進めない」と前向きに受け止めたという。

 仁子は1917(大正6)年8月16日、大阪市北区富田町の商家に生まれた。父親は福島県二本松神社宮司の二男、重信、母親は鳥取藩士の娘、須磨だ。長女・晃江(てるえ)と二女・澪子(みおこ)に続く三姉妹の末っ子で、家族から可愛がられて育った。ちなみに朝ドラで松坂慶子が演じる福子の母、鈴の決め台詞「私は武士の娘です」は、須磨の口ぐせだったという。仁子に「クジラのように物事をすべて呑み込んでしまいなさい」と言い聞かせたのも須磨だった。

 長女の晃江は目を引くような美人。二女の澪子は控えめで、働き者の女性だった。朝ドラで出てきた福子の姉、咲(内田有紀)に白馬に乗って会いに来る歯科医、牧善之介(浜野謙太)のエピソードも実話が元になっている。晃江にプレゼント攻めで求婚したが、断られたそうだ。

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仁子の少女時代、一家の生活は苦しかった…