止めたバットのグリップエンドに当たった打球が、まさかのタイムリー内野安打。「ドカベン」の殿馬一人ばりの秘打が見られたのが、7月27日の楽天vsソフトバンク(ヤフオクドーム)。

 初回に1点を先制したソフトバンクは、3回にも松田宣浩の左前タイムリーで2対0とリードを広げ、なおも2死一、三塁のチャンス。

 次打者・中村晃は、カウント1-2と追い込まれたあと、塩見貴洋の4球目、内角をえぐる球にバットを止めようとした。

 ところが、ボールはまるで狙いすましたかのようにバットのグリップエンドの部分にコツーンと当たり、ボテボテの三ゴロになった。

 慌てて一塁に走る中村。今江年晶がダッシュして打球を拾い上げ、一塁に送球したが、中村の足がわずかに勝り、セーフ!この間に三塁走者の内川聖一が生還し、ソフトバンクはグリップエンド直撃のタイムリー内野安打という珍事で、ラッキーな3点目を挙げた。

 だが、「秘打!」「秘打!」と騒ぐ周囲とは裏腹に、本人は「(似たような当たりは)これまでに何回かある。別に珍しいことじゃない」と至ってクール。

 それもそのはず。ソフトバンクは、前年7月5日のオリックス戦(ヤフオクドーム)でも、甲斐拓也が体近くに来た球を避けた際に、ボールがグリップエンドに当たり、一塁悪送球の間に得点を記録する珍プレーがあったばかり。“グリップエンド秘打”とはご縁が深いのだ。

 この一打で幸運を味方につけた中村は、3対5と逆転された直後の5回1死一、三塁でも中前に同点タイムリー二塁打を放つなど、5打数4安打3打点と大当たり。勝っていれば、お立ち台確実だったが、試合は皮肉にも5対5の8回に押し出し四球で勝ち越され、5対6の敗戦。幸運の女神に途中でハシゴを外される結果となった。

 “悪球打ち”を代名詞とする「ドカベン」の人気キャラクター・岩鬼正美も顔負けの“ワンバウンド打ち”で見事チームを勝利に導いたのが、ヤクルト・雄平。

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まるで岩鬼のような秘打が炸裂