ロッテ・井上晴哉 (c)朝日新聞社
ロッテ・井上晴哉 (c)朝日新聞社

 2018年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2018年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「ドカベンもビックリの秘打編」である。

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 漫画「ドカベン」の一シーンを彷彿とさせるようなスーパー打球が、スタンドのファンを驚かせたのが6月27日の楽天vsロッテ(ZOZOマリン)。

 1点を先行されたロッテは1回裏2死一、三塁、5番・井上晴哉が則本昂大の初球、150キロの速球をフルスイング。高々とレフト方向に上がった打球は、風速12メートルの向かい風に戻される形で、ぐんぐん流される。そして、必死にダイビングキャッチを試みた島内宏明のグラブをかすめてポトリ(記録は二塁打)。

 長い長~い滞空時間の間に三塁走者・荻野貴司はもとより、一塁走者・角中勝也までホームインし、2対1と逆転に成功した。

 アッパースイングから天高く舞い上がった打球は、漫画「ドカベン」に登場する通天閣高校のエース&4番・坂田三吉の通天閣打法を思い起こさせた。マリン名物・強風の産物とはいえ、リアルでこの打球を体感した人は、得した気分になったはずだ。

 試合はこの2点がモノを言って、ロッテが4対3の勝利。井上は「通天閣は大阪だし、スカイツリーは東京だし、千葉名産だと落花生?落下と(名前が)晴哉だから」という理由から自ら“ラッカセイヤ”打法と命名した。

 ちなみにZOZOマリンの横には高さ180メートルのアパホテル&リゾート東京ベイ幕張があり、108メートルの通天閣より高いことから、“180メートルアパ打法”の見出しをつけたスポーツ紙もあった。

 ルーキー時代の14年に開幕4番に抜擢されるなど、“和製大砲”と期待されていた井上は、今季チーム最多の24本塁打を記録し、プロ5年目にして開花した。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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