8月16日の巨人戦(神宮)、1回2死ニ、三塁の先制機に、山口俊の5球目、ワンバウンドのフォークをゴルフスイングのようにしてすくい上げ、右前に運ぶ2点タイムリー。ボールが跳ね上がってくる瞬間にドンピシャリでタイミングを合わせた“秘打”だった。

 これには、この日ラジオ中継の解説者を務めた前監督の真中満氏も「雄平ならではと言いますか。ワンバウンドって、意外と打ちにくいですからね。よくライトまで飛びましたね」と驚いていた。

 7対0の勝利後、雄平は「ボール球でしたが、いいところに落ちてくれました。試合前の練習で慎也さん(宮本慎也ヘッドコーチ)が投げてくれて、ワンバウンド打ちしていたから、それが生きたかな」と結果オーライを喜んだが、「結果は最高だけど、内容は反省しかない」と苦笑い。

 オリックス時代のイチローも00年5月13日のロッテ戦(神戸)で、ホームベース手前でワンバウンドするフォークを右手1本で右前に運んだことがあるが、「一緒にはできません」と謙虚そのもの。

 実は、前日も吉川光夫の内角への完全なボール球を払いのけるようなスイングで右前タイムリーにしたばかり。2日連続の悪球打ちとあって、悪いクセがつかないよう、自らを戒めていたようだ。

 その甲斐あって、今季は自身キャリアハイの打率3割1分8厘をマークし、故障で中途離脱した前年のリベンジをはたした。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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