“絶好の立ち位置”が功を奏して珍サヨナラ劇を生んだのが、5月10日の日本ハムvsオリックス(京セラドーム大阪)。

 1対1で引き分け寸前の延長12回、オリックスは先頭の安達了一が左前安打で出塁。送りバントで二進したあと、代打・中島宏之の敬遠、宗佑磨の中前安打で1死満塁とサヨナラのチャンスを迎えた。

 B級ニュース史に残る珍サヨナラ劇が幕を開けたのは、代打・伏見寅威が三振に倒れ、2死になった直後だった。

 次打者・小田裕也に対し、浦野博司の初球、135キロフォークがワンバウンド。捕手・鶴岡慎也が一塁ベンチ方向にそらしてしまった。

 慌ててボールを追った鶴岡は、倒れ込むような姿勢から本塁ベースカバーに入った浦野に送球。これを見た三塁走者・安達が本塁突入を自重したため、サヨナラ劇は回避されたかに見えた。

 ところが、どこでどう間違ったのか、送球はなんと打席を外していた小田の足に当たり、一塁線を転々。この隙に安達が再スタートを切り、浦野の本塁送球も暴投になる間にサヨナラのヘッドスライディングを決めた。

 3連続暴投による珍幕切れ……。試合後のヒーローインタビューの人選は困難を極め、結局、サヨナラ生還をはたした安達が呼ばれたが、テレビ解説の大島公一氏が「(ヒーローは)小田じゃないですか」とコメントしたとおり、“真のヒーロー”は、無意識のうちに“絶好のポジショニング”をとっていた小田だったのである。

 2人の走者をめぐって、約30秒間にわたって時ならぬ“鬼ごっこ”が繰り広げられたのが、6月26日の楽天vsロッテ(ZOZOマリン)。

 4対0とリードのロッテは6回、四球と鈴木大地の右前安打で1死一、三塁と追加点のチャンス。鈴木の代走で登場した一塁走者の岡田幸文が二盗を試みた。捕手・嶋基宏が二塁に送球したが、判定は「セーフ!」。1死二、三塁とチャンスの輪が広がったかに思われた。

 ところが、ここで三塁走者の角中勝也が飛び出してしまう。ショート・茂木栄五郎が、嶋に返球。ボールが嶋からサード・今江年晶に転送されると、角中は本塁方向へ。しかし、今江から嶋への返球が横にそれてしまい後逸。ヒヤリとさせられたが、ファースト・銀次がカバーに入ったため、角中は三塁に戻った。

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果てしない鬼ごっこが続く…