巨人にFA移籍した丸佳浩(左)と巨人・原新監督 (c)朝日新聞社
巨人にFA移籍した丸佳浩(左)と巨人・原新監督 (c)朝日新聞社

 例年以上に大物選手の移籍が多く、活発な印象の強いプロ野球のストーブリーグ。今年もその中心となっているのはやはり巨人だ。チームワーストタイとなる4年連続で優勝を逃して、今オフは積極的な補強に動いている。中でも大きな補強と言えるのが、フリーエージェント(以下FA)の目玉である丸佳浩の獲得だろう。今年巨人の外野陣の中で規定打席に到達したのは亀井善行のみ。センターのスタメン出場試合数は陽岱鋼が56試合、重信慎之介が38試合、長野久義が36試合、立岡宗一郎が8試合、中井大介が5試合と固定することができておらず(中井はオフに退団)、ここに丸が入ることによってセンターラインの安定感はぐっと増すことになる。また打順も1番坂本勇人、3番丸、4番岡本和真という並びが固定されると他球団からは大きな脅威となるだろう。
 
 しかし、丸以外の補強については、はっきり言って巨人ファンでも首をかしげたくなるようなものだった。まずFAでもう一人獲得したのは炭谷銀仁朗だ。2013年と2017年のWBCでも侍ジャパンに選ばれているパ・リーグを代表する捕手だが、西武では森友哉の台頭もあって、出場試合数が大幅に減少しFA移籍に踏み切った。来シーズンで32歳という年齢と安定した守備を見ても、まだ余力は十分残っているように見える。だが、巨人には同じディフェンスタイプの捕手である小林誠司と、強打が持ち味の大城卓三、宇佐見真吾という一軍クラスの捕手が三人揃い、さらに二軍には岸田行倫も控えている。そして岸田、大城は昨年のドラフト2位と3位で獲得した選手である。小林がいるにもかかわらず上位二つの枠を使って社会人から捕手を獲得した指名も大いに疑問だったが、そこに炭谷も加わって捕手の“だぶつき”がさらに増すこととなった。

 他のポジションならともかく、一人しか試合に出場できない捕手に人的補償を伴うAランクの選手を獲得する意図が全く分からない。今シーズン規定投球回数に到達したのが菅野智之とリリーフとしても併用された山口俊の二人だけだったという投手陣の現状を考えると、同じFAでも狙うべきは西勇輝(オリックス阪神)だったのではないだろうか。また、オリックスを自由契約になった中島宏之も獲得したが、昨年オフに若返りの意図で村田修一を放出したことを考えるとこちらの補強も疑問が残る。また、12月6日にはマリナーズを退団した岩隈久志の獲得も発表されたが、過去2年間故障続きであり来季で38歳という年齢を考えると、こちらも大きな期待はかけづらいだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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日本ハム、巨人と「雲泥の差」の補強戦略