グジバチ:グーグルにも「チェック・イン」というメソッドがあって、打ち合わせの初め5~10分間は、「今日感じていること」とか「今日体験したこと」とか、仕事以外のことでもいいのでまずお互いの「情報」をシェアする。御社の朝礼と同じように、やはり心理的安全性を高めて、お互いの信頼や尊重の関係を構築することが目的なんですね。

井手:社員の有志が自由に社内報を作って、メールで配信したり会社のトイレや廊下に貼り出したりもしています。全社員が参加する月1回1時間の経営情報共有会では、有志が寸劇で経営理念などを面白おかしく紹介したりもします。楽しく笑いながら浸透させようという取り組みですね。そういうコミュニケーションの仕組みが何十もあります。

グジバチ:興味深いですね。「楽しく笑いながら」とおっしゃいましたが、弊社も「プレイワーク」(遊ぶように働く)を理念の一つに掲げています。でも、大手日系企業の人たちと話をしていると、ほとんどの人が、仕事と楽しさは関係ないという感じなんですね。楽しさはプライベートで求めるものというわけです。

井手:「楽しい」には二つの軸があるような気がします。一つはユーモアの軸。心理的安全性を確保するには、厳しくやるよりはお茶目なほうがいいと思う、ピョートルさんや私みたいに(笑)。ユーモアがあってその場の空気を和ませる経営者のほうがスタッフは自分の意見を言いやすいでしょう。せっかくいいアイデアがあるのに、「また怒られる」なんて思ったら何も言えない。それは経営者にとってもったいないことで、つまり会社にとって大きな損失ですよね。

グジバチ:「仕事は真面目にやるべき」というのは単なる思い込みで、僕はむしろ、楽しさは生産性を向上させるものだと考えています。これを文化として根付かせるために、僕が経営するプロノイア・グループでは「Play Work(遊ぶようにはたらく)」という行動指針があります。ヤッホーさんの「楽しい」の軸は何ですか?

井手:仕事に対して高いモチベーションで、自分で考えて自分から行動して、結果うまくいったことで得られる楽しさ。なので、社員の自主性を重んじるようにしています。方向性だけは決めますが、あとは権限委譲して、それぞれが経営目線で考えて行動する。それで失敗することもあるけれども、うまくいったらうれしい。それが仕事の「楽しい」ですね。

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ビールづくりで大きな意味を感じられるのか?