グジバチ:プロノイアでも同じですが、グーグルでは仕事の意味として、「インパクト」をとても大事しています。スタッフは「このメソッドやテクノロジーを提供すれば全世界が変わる」といった大きな社会的影響を意識しながら仕事をしているわけです。それが会社を一つのチームとしてまとめる力にもなっているし、実際に世界規模で影響を与えている。あえて失礼な聞き方をしますが、ビールづくりにそんな大きな意味を感じることはできるんでしょうか。

井手:私たちが掲げているミッションは「ビールに味を! 人生に幸せを!」。日本のビール文化を変えたいと思っているんですね。世界には100種類くらいのビールがありますが、日本ではまだ全然つくられていません。「いろんな味をつくる」というのは大手メーカーがやっていない取り組みです。また、私たちは「ビール製造サービス業」を自認しています。サービス業というのは、面白いデザインやネーミング、ファンイベント、ネットでの「くだらない」コンテンツの配信といった、お客さまに喜んでもらって幸せになってもらうためのエンターテインメントですね。究極を言うと、「よなよなエール」を通してファンが幸せになって、その幸せが世界に広がればノーベル平和賞もとれるんじゃないか。グーグルとは比べられないけれども、そんな壮大な思いも抱きながら仕事をしています。

グジバチ:なるほど、面白いですね。近年、ビジネスの世界は「モノづくり」から「仕組みづくり」へ、お客さまとの関係も「フォア」から「ウイズ」、つまり「ファンづくり」へと移行しています。そして大事なのは社会的な貢献です。それができない企業はもう成長できない。グーグルもそうだし、井手さんのいまのお話もこうした方向性と一致していると感じました。

井手:大きなミッションを達成するためにも、誰が下で誰が上でということではなくて、お客さまも取引業者さんも社員たちも、みんなが幸せになるようなフラットな関係ができたらいいなと考えてきました。そうなるようにチームづくりをしていったら、だんだんその輪が広がって、いまは全体的に「よなよなファミリー」という感じになっています。

グジバチ:会社の中のチーム対チームのコミュニケーションはどうでしょうか。縦割りとかにならない、何か橋渡しの仕組みはありますか。

井手:縦割りになりにくいように、「仕事時間の20%は本来の仕事以外のプロジェクトに自由に参加していい」という仕組みを取り入れています。

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グーグルにも「20%ルール」が…