筆者が調査した東京23区にある私立保育所のうち株式会社、有限会社、学校法人などが運営する認可保育所254カ所の保育者人件費比率の平均値は42.4%、社会福祉法人立477カ所の平均は55.4%だった(2015年度)。株式会社は社会福祉法人と比べ10ポイント以上も人件費比率が低く、30%未満が21カ所もあった(表参照)。

本稿では、株式会社系について詳報する。保育者人件費比率が低い21施設、合計13社に対し、AERA dot.編集部と筆者はアンケートを実施した。回答期限までに回答があったのは、日本保育サービス、テンプスタッフ・ウィッシュ、ブロッサム、グローバルキッズ、エーワン、Kids Smile Project、ポピンズの7社だった。回答をしなかったのは、千趣会チャイルドケア、アイグラン、三幸学園、ワコム、サクセスアカデミー(現ライクアカデミー)、マミーズエンジェルの6社だった。ただし回答のあった社のなかには、内容が回答したというに値しないものもあった。各社の回答は文末の一覧の通り。

 記載ミスがあったと弁明する社もあったが、調理の業務委託を人件費に含めず人件費比率が下がったとする回答が多かった。ほか、自治体独自の補助金や園舎の家賃補助が多かったことで計算上、人件費が低く見えるという正当な理由もあった。それであれば、賃金の実額はどうなのか。

 東京都は今年度から、新卒、3年目、7年目などの3パターンについてモデル賃金の公開を求めている。各保育所は、ホームページなどを通じて示さなければならず、都もキャリアアップ補助を受けているすべての保育施設のモデル賃金を公開する準備を進めているところだ。こうしたことから、今回の各社へのアンケートでは、都にならって経験年数ごとの年収を尋ねた(文末の回答一覧参照)。日本保育サービス、テンプスタッフ・ウィッシュは親会社が上場しているにもかかわらず、モデル賃金について答えなかった。

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募集時と違う保育士給与の実態