前述の財務諸表から、本来の使途である「人件費、事業費、管理費」のほかに流用された新規開設費用、積み立て、最終的な資金の残高を独自集計すると、23区にある私立の認可保育所の流用額は合計で280億円に上った(2015年度の実績)。つまり、保育士の人件費が施設整備や内部留保に回ってしまっているのだ。処遇改善が行われても、人件費の大元が流用できるのであっては、底の開いたバケツに水を注ぐのと同じ。委託費が保育士と子どもたちのためにきちんと使われるよう、弾力運用に一定の歯止めをかけるべきではないだろうか。(ジャーナリスト・小林美希)

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※保育者人件費比率が低い保育園に対するアンケート調査への回答は以下の通り(回答があったもののみ)

■テンプスタッフ・ウィッシュ/大井町のぞみ保育園
【回答】
 大井町のぞみ保育園の保育者人件費率は44.7%が正しい数字のため、書類の訂正や再提出の必要性について確認中です。

■ポピンズ/ポピンズナーサリースクール市ヶ谷
【回答】
 計算された数字の根拠が不明ですが、事実と大きく数字が異なっております。しかしながら、数値につきましては公開しておりませんので、開示は差し控えさせていただきたいと存じます。

■ブロッサム/つきのみさきさくらさくほいくえん、いしかわだいさくらさく保育園
【回答】
(つきのみさきさくらさくほいくえん)
 当園は調理の部門を完全に外部委託をしています。また派遣保育士もおり業務委託費支出が保育従事職員に該当をいたします。この費用も人件費支出に該当すると考えます。当園は2014年度10月に開園していますので、2015年度はボーナス査定期間も短いため、人件費の割合がすくないと考えます。平成28年度は約10%程度人件費率が上昇しています。
(いしかわだいさくらさく保育園)
 2015年4月に開所をして1年目の収支となります。賞与査定期間も半分となります。また、つきのみさき園と同じく派遣保育士分は業務委託費支出が保育従事職員に該当をいたします。開園2年目については、2016年度は約10%程度人件費率が上昇しています。

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アンケートに回答した企業は…