■「好きになること」は最強のモチベーション

 若い人たちから、よく相談されることがある。

「進路を選ぶときに『いろんなことに興味があって、一つに絞れない』と。気持ちはよくわかりますが、ここはもう『エイヤ!』と決めて、とりあえず歩き出してみて、と答えていま
す。その先でまた何かが見えてくるはず」

 反対に「好きなことが見つからない」と悩む人もいる。

「それもやっぱり、とにかく歩き出すことだと思います。私も最初から宇宙飛行士になると決めていたわけではありません。『星ってきれいだな』という思いから始まって、星座について知ったり、チャレンジャー号のことがあったり、そういうことを経て、自分のなかで思いが育っていったんです。『好き』の気持ちが強くなれば、つらいときもあきらめずにいられるのでは」

 とはいえ、「あきらめないこと」は一番難しいことではないだろうか。そう問うと、山崎さんは笑った。

「私の場合は、ただ単に宇宙が大好きなんです。訓練など大変そうに思われることも、好きだから苦に感じませんでした。楽しいからあまりいろいろ心配せずにいられるのかもしれません」

 この日撮影に使用したライトの構造にも、山崎さんは興味津々だった。カメラマンの「灯台と同じような仕組みで……」というひとことですぐに理解し、「なるほど!」「面白い」とニコニコしていた。彼女を宇宙まで導いた好奇心の旺盛さは、今も健在である。

 まず動き出すこと、そして楽しむこと。この二つが、山崎さんの壮大な夢を実現させた両輪だったようだ。

◯山崎直子(やまざき・なおこ)/1970年、千葉県生まれ。東京大学工学部航空学科卒、同大大学院航空宇宙工学専攻修士課程修了後、NASDA(現JAXA)勤務。99年、宇宙飛行士候補に選ばれ、2010年、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗、国際宇宙ステーションに10日間滞在。11年、JAXA退職。現在は内閣府宇宙政策委員会委員などを務める。2児の母。

(文/鈴木絢子)