投手も多くの選手が自由契約となったが、実績と現在の実力を考えて最も戦力となりそうなのが寺原隼人(前ソフトバンク)だ。2015年には谷間の先発として8勝をマーク。その後2年間は調子を落としていたが、今年は21試合に登板して防御率2.39と安定した成績を残して復活を印象付けた。かつての剛速球投手というイメージは薄れたが、それでもまだ150キロを超えるスピードをマークしておりその球威は健在。シュート系のボールを操るようになって投球の幅も広がっているように見える。既に複数球団が獲得を検討という報道が出ているが、リリーフ陣が手薄な西武などは獲得を検討してもらいたい。

 実績はないが、左の中継ぎとして面白い存在なのが福地元春(前DeNA)だ。ルーキーイヤーの2015年に一軍で13試合に登板して防御率2.87という、まずまずの数字を残したが、その後は、二軍暮らしが続きこのオフに戦力外となった。魅力はコンスタントに145キロを超えるスピード。二軍では4年連続で投球回を上回る奪三振を記録しており、2016年には29試合に登板して0点台の防御率もマークしている。課題はとにかくコントロール。上半身のぶれが大きいフォームでそれが打者の打ちづらさにもなっているが、どうしても抜けるボールが目立つ。しかし、スピードを残したまま、うまくフォームを改善できれば、左右の違いはあるものの桑原謙太朗(阪神)のように中継ぎとして大成する可能性は秘めている。左のリリーフが手薄な広島、阪神などは獲得しても面白いだろう。

 ここで取り上げた以外にも実績のある選手やまだまだ今後の成長が見込める若手は大勢存在している。トライアウトやテストを受けて契約を勝ち取れる選手はごくわずかではあるが、最近では坂口智隆(オリックスヤクルト)のように華麗なる復活を遂げた選手も確かに存在している。そしてそのような選手がチーム、ファンに与える影響は計り知れない。来シーズンもそのような選手が一人でも多く出てくることを期待したい。

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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