逆にスピードの持続性を頼みにアメリカの芝レースを目標にするのも面白いかもしれない。来年のブリーダーズカップターフは西海岸のサンタアニタパーク競馬場での開催。2012年に同競馬場で開催されたときには、日本からトレイルブレイザーがBCターフに参戦し4着と善戦、日本馬にとって縁起のいい競馬場だといえる。主戦を務めるクリストフ・ルメール騎手がアーモンドアイの主戦騎手でもあることを念頭に置けば、アーモンドアイで凱旋門賞、レイデオロでBCターフという使い分けも可能性はゼロではない。

 大将格の上記2頭に比べると格は落ちるが、凱旋門賞への適性という意味では魅力的なのがエタリオウ。ダービー4着、菊花賞がハナ差の2着とクラシックで善戦しながらも勝ち鞍はデビュー2戦目の未勝利戦のみ。その後は7戦して2着6回(唯一の例外は日本ダービー4着)と勝ち味に遅い戦績は、シルバーコレクターとも善戦マンとも呼ばれた父ステイゴールド譲りか。しかし、父の血を色濃く引いているというならば、オルフェーヴルにナカヤマフェスタと2頭の凱旋門賞2着馬を輩出した底力を秘めていてもおかしくはない。

 実際、2着に敗れたとはいえ、菊花賞でのラスト3ハロンは出走馬最速タイ(33秒9)と、決してジリ脚なわけではない。初のG1制覇が引退レースでもあった香港ヴァーズという父ステイゴールドに倣い、エタリオウが凱旋門賞でG1初制覇という夢を見てみたくもある。

 マイル路線に目を向ければ、今年のG1安田記念を連闘での参戦で制すという常識破りを見せたモズアスコットが面白そう。来年で5歳になるが、デビューが3歳6月と遅かったこともあって、安田記念が通算11戦目と使い減りしていない。何よりの魅力は、父が現役時代に欧州を無敗のまま席巻した名馬フランケルということ。フランケルは種牡馬としてもクラックスマンら強豪馬を出して成功を収めており、モズアスコットも欧州適性に期待が持てそうだ。イギリスのアスコット競馬場から取った馬名からして陣営の海外遠征志向は強く、来春にはロイヤルアスコット開催でマイルG1クイーンアンステークスを走る姿が見られるかもしれない。

 いまや、日本馬が海外G1を制すのは珍しくなくなったとはいえ、決してハードルが低くなったわけではない。実際にアーモンドアイらが海外遠征を実現したとしても、確実な勝利など望むべくもない。だが、挑戦しないことには何も始まらないのも事実。やはり競馬ファンとしては日本からの遠征馬が凱旋門賞を筆頭とした海外G1を勝つ瞬間を待ち望んでいるもの。関係各位には万難を排しての挑戦を続けていただけるよう、切に願うばかりだ。(文・杉山貴宏)