IGRいわて銀河鉄道・滝沢駅の撮影ポイント「トレイン・スポッターズ」から(撮影/櫻井寛)
IGRいわて銀河鉄道・滝沢駅の撮影ポイント「トレイン・スポッターズ」から(撮影/櫻井寛)
IGRいわて銀河鉄道・滝沢駅の撮影ポイント「トレイン・スポッターズ」(撮影/櫻井寛)
IGRいわて銀河鉄道・滝沢駅の撮影ポイント「トレイン・スポッターズ」(撮影/櫻井寛)
※各種報道による。肩書、年齢などは報道当時のもの
※各種報道による。肩書、年齢などは報道当時のもの

「撮り鉄」が引き起こすトラブルを目の当たりにするたび、うんざりしている写真愛好家は多い。鉄道会社や乗降客に迷惑をかけるだけでなく、不法侵入や器物損壊、鉄道営業法違反、威力業務妨害といった違法行為にも及び、「一部の人の悪行であり、ルールを守って撮影している自分と同じと思われたら困る」という心理が働くからだろう。「人よりいい写真を撮りたい」という気持ちは誰にでもある。しかし、自分さえよければいいのだろうか? 「撮り鉄」の中には、「自分が撮った写真によって鉄道の魅力を伝えることができる」と考える人もいるようだが、そのためには何をしても許されるのだろうか? アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』では、鉄道写真家・櫻井寛氏を取材。撮影愛好家はどう振る舞うべきなのか、話を聞いた。

【そんなことまでする!? 撮り鉄トンデモ事件簿の一覧はこちら】

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 2017年10月14日。「鉄道の日」のこの日、IGRいわて銀河鉄道滝沢駅(岩手県滝沢市)に鉄道写真撮影ブース「トレイン・スポッターズ」がオープンしました。これは、鉄道写真を安全に撮ることができる、日本初の駅施設です。

 ホームの先端にすべり止めの塗装を施し、三方をフェンスで囲ってあります。自撮り棒は使用禁止ですが、三脚は混雑時でなければ使えます。

 ここから狙えるのは同鉄道の「IGR7000系」に加え、JR花輪線から乗り入れている「キハ110系」や、金太郎の愛称で知られる電気機関車「EH500形」など。タイミングが合えば、JR東日本の「TRAIN SUITE四季島」も撮影できます。300ミリ以上の長玉があると、よりいい写真が撮影できるスポットです。

 実はこの「トレイン・スポッターズ」の設置には、私も深く関わっています。友人がIGR銀河ファンクラブの会長で、そのご縁で同鉄道の菊池正佳社長とも交流が芽生えました。菊池社長から「ここを鉄道の聖地にしたい」という相談を受け、撮影ブースの設置を提案したのです。

 かつて、ホームの先端といえば、「撮り鉄」の定番撮影スポット。乗降客の迷惑にならず、いい写真が撮れる場所でもあります。しかし、近年では黄色線が引かれ、ホーム先端に立ち入れない駅が増えてきました。

 安全対策は重要で、ホーム先端は撮影用の場所ではないことはわかっています。でも、これだけ鉄道写真愛好家が多いのですから、鉄道会社はそれを逆手にとって安全な場所を作り、「どうぞここで撮影してください」と開放してもいいのではないかと考えました。

 正直なところ、滝沢駅は人気の撮影スポットだったわけではありません。でも、鉄道会社側がこうした場所を作ったことに意義があると思っています。また、この駅には同社直営の「串焼処 銀河」という焼き鳥屋さんがあります。菊池社長が「撮り鉄の後はぜひ“鶏り鉄”で乾杯!」と言うように、より多くの集客につながればという考えから、この駅が選ばれたのです。「トレイン・スポッターズ」の名前の由来は、イギリスの鉄道愛好家「トレイン・スポッター」。「ズ」は複数形ではなく所有を表しています。写真愛好家や鉄道ファンのための、安全な聖地にしたいという願いを込めています。

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「このカメラ敏感なんだよ!」