1対0とリードの西武は、3回2死から松井稼頭央が四球で出塁。加藤康介が一塁にけん制球を投げると、これが悪投となり、ファースト・福浦は捕ることができなかった。

 ところが、本来なら避けなければいけないボールボーイが、ファウルグラウンドでナイスキャッチ。さらに、福浦にストライク返球したものだから、スタンドはやんやの大喝采。しかし、これは当然あってはならないことだ。

 直後、審判団がボールデッドを宣告し、協議の結果、松井には三塁が与えられた。そして、直後ロッテは1点を失い、試合に負けてしまった。

 ちなみにこの日、ロッテ打線は張誌家に1安打完封を喫しているが、唯一の安打は、喜多隆志の左飛を和田一浩がグラブに当てて落球したといういわくつきのもの。ノーヒットノーランを逃した張が、「今からでも記録が(エラーに)直りませんか?」と残念がったことを覚えているファンもいることだろう。
 
 93年のドラフト7位・福浦は、全指名選手の最後、64番目の指名。ロッテは前年から千葉に本拠を移したばかりで、本人も「地元・千葉の選手をということで、最後に指名されたのでしょう」と回想している。

 入団時の背番号も、支配下登録選手70人の最後の「70」だったが、01年は小笠原道大(日本ハム)との激しい争いの末、シーズン最終戦で首位打者を獲得。“どん尻の男”から“1番の男”へと下剋上を実現すると同時に、プロ野球史上初のシーズン盗塁ゼロの首位打者という珍事も達成している。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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