日米FTA交渉を始めたら、どう考えてもTPP以上の成果を出さなければ、トランプ大統領の面子が潰れるから、交渉は非常に厳しいものになる。

 次回会合は、予想したとおり、9月21日、つまり総裁選明け直後にも行われると報道されている。最近のトランプ大統領は、対日貿易赤字を声高に批判している。どんな脅しをかけてきてもおかしくない状況だ。とりあえず、総裁選後に先延ばしして一息ついていた安倍総理かもしれないが、次期会合の日程が近づいたことで、マスコミの関心が高まり、しかも、非常に悲観的な予想記事が増えてきた。自動車に追加関税をかけるぞという最大級の脅しが行われることは必至。輸出数量制限や輸入台数目標などの話が出るかもしれない。農業でもTPP以上の譲歩を迫られると各紙が書き立てる。

 それに対して、日本には有効な手札がない。これまで米国製武器大量購入を約束して凌いできたが、さらなる椀飯振舞をせざるを得なくなる可能性もある。

 こうした状況では、総裁選で、「日本はアメリカと一体だ」とか、「日米関係はかつてないほど強固なものになった」などと言っても、すぐに、石破氏に反論される。安倍総理が、トランプ大統領との一体性をあまり声高に強調しなくなったのは、相当自信が無くなっていることの表れではないだろうか。

■八方塞がりの安倍総理の頼みは中国の習近平氏

 そんな中で、実は、安倍総理にとって、唯一の望みが中国の習近平国家主席だ。中国は米国との貿易戦争でかなり困っている。そこで、ロシアに秋波を送ったりもしているが、八方塞がりの安倍総理も利用できると考えたようだ。習氏としては、非常にぎくしゃくしていた日中関係を改善すれば、日米関係にくさびを打ち込むことにもなり、米国に対する牽制になる。また、日中経済関係をさらに発展させれば、米国の制裁で被るダメージをある程度埋め合わせることにもなる。

 一方の安倍総理としては、中国との良好な関係を見せることで、外交成果だと宣伝できる。東方経済フォーラムの機会に日中首脳会談を行ったのも、まさにこれを総裁選の宣伝材料にしたいと考えたからだ。

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「トランプと習近平、どちらを取る?」と聞かれたら…