■手詰まり感が増す北朝鮮外交

 安倍総理の頭の中には、こんな言葉があるのだろう。「言うだけならタダ」。プーチン発言への言い訳はその典型だが、他にも同様の例がある。

 安倍総理は、北朝鮮問題で完全に蚊帳の外に置かれているのに、「私が直接金正恩氏と会って、拉致問題、核ミサイル問題を解決する」とことあるごとに語るようになった。そんなことは現状では無理だというのが、事情通の見方だが、一般の人にはわからない。何か特別のルートで話でもしているのかなと思ったり、中には、安倍さんならやってくれると期待する人もいるかもしれない。結果がわかるのはかなり先の話だから、言った者勝ち。総裁選の間、化けの皮がはがれなければいい。そう考えているのだと思う。

 ところが、現実は厳しい。テレビ東京の報道によれば、先日北朝鮮を訪問したアントニオ猪木議員に対して、北朝鮮側が、「日本が、各国に対し北朝鮮との断交を求めていては、二国間交渉は成り立たない」と述べていたことがわかった。北朝鮮で外交を統括する朝鮮労働党のリ・スヨン副委員長が、「日本政府は、フィジーのような小さい国に対しても、北朝鮮との断交を求めている。これでは日本との交渉に臨むことはできない」と不快感を表明したというかなり具体的な話も伝えられた。河野太郎外務大臣が講演や二国間会談などで、北朝鮮と外交関係がある国に対し、北朝鮮との断交を求めてきたことを指しているのではないかということだ。さらに、北朝鮮側は、「アメリカとも関係改善している。制裁を続ける日本は取り残される」とも述べたというのだから、とても安倍総理が直接金正恩と会って、拉致問題を解決するなどという雰囲気ではない。こちらの方も、総裁選前に水をかけられてしまったことになる。

■日米FFRは厳しい報道が相次ぎがっかり

 今まで安倍外交の大黒柱だと思われていた日米関係も風前の灯火だ。8月の日米FFR(新たな貿易協議)第1回会合では、初回ということもあり、何とかクリンチ状態のまま逃げた日本側は、次の会合を総裁選後にするように米側に懇願したのではないかと思われる。総裁選前にあまり厳しい話、特に農産物の関税を下げろなどと言われたら農民票に影響必至だからだ。また、次の会合では、日米FTA交渉を始めろと言われることにもなるだろう。

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八方塞がりの安倍総理の頼みは中国の習近平氏