金足農・吉田輝星 (c)朝日新聞社
金足農・吉田輝星 (c)朝日新聞社

 100回記念大会ということもあり、例年以上の盛り上がりを見せた今年の全国高校野球選手権。ドラフト上位候補と見られていた選手が軒並み結果を残したこともあって、視察に訪れたプロのスカウト陣からも「今年の高校生のドラフト候補は豊作」という声が聞かれた。中でも評価を上げたのはやはり吉田輝星(金足農)だろう。最速150キロをマークしたストレートだけでなく、多彩な変化球、打者を翻弄する投球術、牽制やフィールディングなどのピッチング以外のプレーも高レベルであり、高校ナンバーワン投手という評価を不動のものにした。

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 これだけの実力と人気があれば当然ドラフト1位でプロ入り確実、と言いたいところだが、大会期間中からその進路についてはプロと異なる選択肢が浮上していると報道された。八戸学院大の正村公弘監督が昨年から吉田を熱心に指導しており、その繋がりから吉田の進学が有力だというのだ。ドラフト1位候補と言われる高校生が、即プロ入りせずに進学を選択するケースは決して珍しいことではないが、一般の野球ファンには馴染みの薄い地方リーグというのは稀だろう。

 しかし八戸学院大、そして所属している北東北大学野球連盟は大学野球の世界では決して無名というわけではない。むしろ、プロ野球への選手輩出という意味では、全国で見ても上位のレベルとも言えるリーグである。その名の通り東北の北部、青森県、岩手県、秋田県の大学で構成され、一部6校、二部6校、三部4校でリーグ戦が行われている。現在の形になったのは1991年からと比較的歴史は浅いが、連盟創設当初にリーグを牽引したのが青森大だ。1992年秋からはリーグ戦9連覇を達成するなど、最多の23度の優勝を誇っている。青森大の存在が中央球界で最初に注目を集めたのは、1998年の全日本大学野球選手権だ。2回戦で東京六大学優勝の明治大を破ると、その勢いで初のベスト4に進出。翌年の1999年も松阪大(後の三重中京大。2013年に廃校)、奈良産業大(現奈良学園大)を破り、2年連続で準決勝進出を果たしている。この時に下級生ながら中軸として活躍していたのが細川亨(楽天)だ。上級生の時は全国でも屈指の強肩捕手として評価され、自由獲得枠で西武に入団している。また、外野のスーパーサブとしてプロで長くプレーする工藤隆人(中日)も当時青森大に所属していた。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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八戸学院大からプロ入りした選手は?