広島カープ・渡辺秀武 (c)朝日新聞社
広島カープ・渡辺秀武 (c)朝日新聞社

 2018年シーズンも終盤戦に差し掛かり、ペナントの行方が気になる今日この頃だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「『そこまでやる?』の珍事件編」だ。

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 ロッテで11年間プレーしたレロン・リーは、1977年に本塁打王と打点王、80年に首位打者を獲得し、2018年5月に青木宣親(ヤクルト)に抜かれるまでプロ野球歴代トップの生涯打率3割2分をマークするなど、ロッテ史上最強の助っ人として活躍した。

 そんなリーにも「顔を見るのも嫌!」という天敵がいた。西武の左横手投げの永射保である。

 下手投げに近い独特のフォームから繰り出す永射のカーブは、左打者にとって、「背中からボールが来る」感覚だった。

 リーも永射にはとことん苦しめられ、通算成績は78打数15安打の打率1割9分2厘に抑えられている。

 そんなリーがあっと驚く秘策を披露したのが、1981年8月10日の西武戦(西武)。この日のリーは第1、第2打席で連続安打を記録。3対3の4回2死満塁で3打席目が回ってきた。

 1点もやれない場面で、西武・根本陸夫監督は当然のように永射を投入する。これに対し、なんとリーは右打席に入って対抗したのだ。

 高校時代はスイッチヒッターとあって、「打てなくてもともとと開き直った心境だった」そうだが、カウント2-2からの5球目を詰まりながらも左前に勝ち越しの2点タイムリー。これがシーズン8打席目にして永射から放った初安打だった。

 試合は5対5の引き分けに終わったものの、憎っくき天敵に一矢報いたリーは「気分的にリラックスしていたのが良かったのかな。ラッキー、ラッキー!」と大はしゃぎだった。

 巨人を皮切りに日本ハム、大洋、ロッテ、広島の5球団で19年間活躍した右横手投げの渡辺秀武は、現役最後の登板となった1982年10月16日の阪神戦(広島)で、前人未到の記録に挑戦した。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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