作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
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写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真)
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 鴻上尚史人生相談。「田舎の家族が、都会から帰ってきた鬱(うつ)の妹に冷たく、世間から隠そうとします」と相談者。妹の鬱を治療するにはどうしたらいいか悩む相談者に、鴻上尚史が訴えた事態の深刻さとは?

【相談4】「鬱の妹が家族に冷たくされています」(相談者:38歳 男性 農家の長男)

 西日本の片田舎で、果物農園を営んでいる家の長男です。相談は、鬱の妹に冷たい家族のことです。3歳下の妹がいて東京でアイドルを目指していたのですが、芽が出ないまま30代になり苦しんでいたようです。途中で鬱症状を発症し、昨年、母親が実家に連れて帰ってきました。

 ですが、父や祖父、祖母の妹への態度が冷たいのです。妹が外出するのも嫌がります。何も言えない母親は、ただ黙っています。心の病気を患っているのは明らかなのに、「あまい夢をみて。だから反対したんだ。もう嫁にもいけない歳だ(妹は35歳)」と言うばかりで最初は病院にすら行かせようとしませんでした。都会に住んでいる人にはわかりづらいかもしれませんが、地方では、今でも鬱に対して世間の目が厳しいところがあるので、世間体を気にしているのです。昔は町内会ののど自慢大会に出るような目立ちたがり屋で明るかった妹がどんどんふさぎ込んで別人のようにしゃべらなくなっていくので、たまらず私が家族に病院に連れて行くべきだと訴えたら、隣の県に病院を探して行かせるならいいとしぶしぶ承知しました。東京に帰すわけにもいきませんし、こんな家族のいる場所で妹の病気が治るとも思えません。どうしたらいいか、鴻上さんのアドバイスをお願いします。

【鴻上さんの答え】これまでの相談の中で、一番深刻

ほがらか人生相談を始めて、さまざまな悩みが送られてきました。ノンキなものもあれば、深刻なものもあります。

 農家の長男さん。じつは、これまでの相談の中で、あなたの相談が、一番、深刻で緊急な相談だと僕は思っています。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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なぜ深刻で緊急なのか?