鬱の妹を隠そうとする田舎の家族… 鴻上尚史が訴える30年後の悲劇 (2/5) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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鬱の妹を隠そうとする田舎の家族… 鴻上尚史が訴える30年後の悲劇

連載「鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋」

dot.#鴻上尚史

 それは、事態がまさに今重大な方向に進行中である、ということはもちろんですが、そう追い込んでいる人達にまったく自覚がなく、なおかつ相談している農家の長男さんにも、事態の深刻さが充分に理解されてない、と思われるからです。

 僕も愛媛県の出身ですから、田舎の人達がどれだけ「世間体」を気にするか、ようく分かります。僕はそういう考え方や習慣に反発して作家になった所がありますが、あなたの父親や祖父・祖母が、妹さん本人より世間体を大切にする気持ちは理解できます。

 先月、僕は「同調圧力の強さと自尊意識の低さ」は、日本の宿痾(しゅくあ)だと書きました。同調圧力の最も強いもののひとつが「世間」です。田舎になればなるほど、高齢者になればなるほど「世間」を強く感じます。つまりは、同調圧力が強まり、逆らえなくなるのです。

 さて、妹さんの状態は、「鬱症状を発症」と書かれています。うつ病かうつ症状か、とても、デリケートな状態だと思います。

 先日、ネットで「うつ病は、脳のこむら返りみたいなものだ」という表現を見ました。

 これは、「うつ病なんてのは、気合が足らないんだよ。根性とガッツで乗り越えるんだよ!」と言いがちな体育会系の人達(いや、もちろんイメージですが)にも、「こむら返り」は気力や根性ではなんともならない病気だと簡単に理解できる、とても的確な言い方だと思いました。

 経験した人は分かりますが、脚がこむら返りを起こした時は、根性で走ったりガッツで伸ばそうと思ってもムダです。筋肉はぎゅーっと固まり激痛が伴います。気合で乗り越えようとすればするほど、痛みが増すのです。

 この痛みは、体育会系であればあるほど、経験しているでしょう。「うつ病はこむら返り」と表現することで、「そうか。それは大変だなあ」と理解する人が増えると思います。

 僕はずっとうつ病を「心が骨折したようなもの」と表現してきました。これはうつ病は「心が風邪をひいたようなもの」という言い方があって、「風邪なんてのは、気力で治るんだよ。いや、そもそもたるんでいる奴がひくもんなんだよ」という精神論を徹底的に否定するために言っているのです。


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