■来季J1で躍進できれば、日本代表監督も見えてくる

 目下、ガンバ大阪は21試合終了時点で勝ち点20の17位。まだまだ危険ゾーンにいるのは間違いない。しかし、宮本監督が英知を結集してJ2降格を回避し、シーズン頭からチーム作りのできる来季J1で躍進を遂げることができれば、先月就任したばかりの日本代表の森保一監督の「次」も明確に見えてくる。

 Jリーグ発足から25年が経過した日本サッカー界としても、ワールドカップ・海外の両方を経験した代表監督が出て来なければいけない時期に来ている。2018年ロシア大会の代表メンバー23人中15人が海外組だった通り、香川真司(ドルトムント)のように世界トップを肌で実感している選手が圧倒的に増えてきた。けれども、指導者の方はUEFAプロライセンス取得という壁に立ちはだかり、欧州での国際経験を蓄積できずにいる。いずれ長谷部誠(フランクフルト)や川島永嗣(メス)らが現地に残って監督になる日が来るだろうが、間をつなぐ国際経験豊富な人材は絶対に必要だ。宮本監督は、理想的な人物に間違いない。41歳という年齢も加味すると、森保ジャパンのコーチとして次のワールドカップに帯同することも十分可能。「次の次の代表監督」を育てる体制も作りやすいのだ。

 海外強豪国を見ても、2018年ロシアワールドカップ優勝国・フランスは20年前の98年フランス大会でキャプテンを務めたディディエ・デシャン監督が率いて頂点に立っているし、2014年ブラジル大会でクロアチアを指揮したニコ・コバチ監督(現バイエルン)も元代表キャプテンだ。現役時代に代表を統率した経験値は想像を絶するほど大きい。そういう意味でも宮本監督には他にはない武器があるのだ。

 加えて言うと、ニコ・コバチ監督と宮本監督はザルツブルク時代のチームメート。「ニコの強力なリーダーシップとメンタリティには驚かされた」と本人も語っていたことがある。そんな元同僚がクロアチア、フランクフルト、バイエルンと成功への階段を駆け上がっていく姿を目の当たりにして、自分自身がやるべきことを強く自覚しているはず。そこは期待していいだろう。

 宮本監督が本当に「ポスト森保」のルートに乗るためには、とにかくガンバ大阪をJ2に落とさないことが肝心だ。倉田も「2012年の降格時は同じレジェンドの松波(正信=ガンバ新強化部長)を救えなかったんで、今回は同じ轍を踏まないようにしたい」と宮本監督を最大限サポートしていく構えだ。倉田筆頭に選手全員を巻き込み、一体感を持って戦う環境をつくることができる新指揮官なら、必ずチームをいい方向に導けるだろう。ここからのリーグ終盤戦の動向が楽しみだ。(文・元川悦子)