菰野・田中法彦(撮影・西尾典文)
菰野・田中法彦(撮影・西尾典文)

 全国3781校が参加し、過去最多となる56の地区で行われた全国高校野球選手権の地方大会も7月30日に幕を閉じた。甲子園大会はいよいよ8月5日に開幕するが、既に98%以上の球児の高校野球が終わったことになり、その中には多くのプロ注目の選手が含まれている。そこで今回は甲子園出場を逃した“甲子園で見たかった選手”をベストナイン形式で紹介したい。なお昨年は清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)や安田尚憲(履正社→ロッテ)など、下級生の頃や選抜大会に出場した選手を含んでいたが、今回は一度も甲子園の土を踏むことができなかった選手のみを対象とした。また、来年以降もチャンスがあるという意味で下級生も除外した。

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 まずは投手。この夏の地方大会で最もインパクトが強かったのは間違いなく佐々木朗希(大船渡・岩手)だったが、まだ2年生ということで除外。今年は甲子園出場組も含めて高校ナンバーワン投手が誰か分かりづらい状況だが、その中でも一人選ぶとなると田中法彦(菰野・三重)となるだろう。身長は173cmでどちらかというと小柄な部類に入るものの、たくましい下半身を生かした躍動感あふれるフォームから繰り出すストレートは間違いなく超高校級。三重大会では優勝した白山に3回戦で敗れたものの、コンスタントに150キロを超えるスピードをマークして居並ぶスカウト陣をうならせた。少しリズムが単調になるのは課題だがフォームに大きな欠点はなく、まだまだ伸びそうな雰囲気がある。将来性のある投手が欲しい球団は上位指名に踏み切る可能性も高いだろう。

 続く捕手は田宮裕涼(成田:東千葉)を推したい。地肩の強さだけであれば他にも目立つ選手は少なくないが、田宮はとにかくプレーの形が安定しているのだ。キャッチングもミットが動かず、スローイングに入る動きも実にスムーズ。形が良いので当然コントロールも良い。昨年までは巧打者タイプだったが、今年に入り体が大きくなり長打力もアップ。夏の東千葉大会でも2本のホームランを放つ活躍を見せた。捕手としての視野の広さも魅力だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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甲子園を逃した選手にも逸材多し