保育所は日曜、祝日、年末年始は休みだが、老人ホームは年中無休。栄養士は1人体制で代わりがいない。老人ホームの施設長から毎年、元旦のシフトに入ることを強要され、わが子は母親のいない正月を過ごした。老人ホームで何かトラブルが起こると、育児休業中でも休みの日でもお構いなしで呼び出され、安心して休日を過ごすことができなかった。

 地方で大きな震災があった時、明日香さんは育児休業中だったが、介護施設の施設長は「何かあったら、明日香さんを呼び出せばいいから」という。そして、実際、度々呼び出された。震度3~4の地震が起こっても介護施設のエレベータはよく止まってしまう。そんな時も、1階の調理室から2階のフロアに食事を運ぶ手が足りないからと、休暇中でも携帯電話が鳴る。朝に地震があると「また呼ばれる……」と、ストレスがかかった。

 そうしたなか、明日香さんは子どもを預けていた保育所からもストレスを受けるという毎日を送っていた。明日香さんは、「保育所から大事にされていたという実感は皆無だった」と、振り返る。

 東京23区内の公立の保育所に子どもを預けながら、社会福祉法人が運営する認可保育所で栄養士として働いていたが、2人目の子どもを妊娠中に子どもが通う保育所の冷たさを感じ始めた。明日香さんのお腹が大きくなってくると、保育士が「出産の予定はいつか」と不自然なくらい何度も聞いてきた。そして出産前から「育児短時間勤務をしないのか」と畳みかけてきたのだった。保育士の口調から、「あ、一人でも早く帰って欲しいんだ」と察した。

 他の母親たちも、2人目3人目を妊娠、出産すると、冷遇されていた。妊婦健診に行くと告げれば、「(園児がお昼寝から起きる)15時にはお迎えに来られますよね」と圧力をかけられていた。少しでもお迎えが遅れると、しつこく理由を問われる。「そのストレスを受けるよりは」と、明日香さんは、産婦人科が混むのを覚悟して仕事が終わってから子どもを連れて妊婦健診に行った。

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頼みの保育園も協力してもらえず