宮城県仙台市は、昭和30年代から市内全ての保育所に栄養士を配置するよう市が独自に補助してきた歴史があり、厚生労働省の「保育所における食事の提供ガイドライン」(2012年3月)でも好事例として取り上げられている。公定価格で栄養士による食事提供がある場合の加算がついたのは2014年度からだ。

 仙台市議会議員で元市立保育所の栄養士だった樋口典子さんは「仙台市が先行事例となり、栄養士の配置が全国に広がった。仙台市では、小規模保育所も含む全ての保育所に栄養士がいるということが常識となっている。栄養士がいることで、食物アレルギーや離乳食の対応がきめ細かくできる」と話す。

 また、保育士とチームを組むことができることで、「調理保育」の実施が可能となるという。保育所運営についてのガイドライン「保育所保育指針」には「食育の推進」という項目がある。樋口さんは、

「クッキングをする時、何歳でどこまでできるかなど、栄養士がいると保育士も掴みやすい。例えは、子どもが砂場で泥だんごを作ることが流行ってきたと思った時に、タイミング良く本物の団子を作ってみるなど、保育士との協働で保育と一体化した調理体験をするなど、保育の質を高めることができる。食育の推進は、食育基本法でも保育所に求められており、専門職の知見によって食育の推進に大きく寄与する」

 と栄養士の役割について解説し、こう指摘する。

「栄養士は、現場になくてはならない存在だが、それにもかかわらず、『調理員等』の等に栄養士が含まれるのは専門性が認められていないことになる」

 保育所のなかで栄養士は少数派の職種のため、その存在価値が見過ごされがちだ。保育士と同様、栄養士も人手不足に陥っている。栄養士の働き方や処遇についても目を向ける必要がある。(ジャーナリスト・小林美希)

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小林美希

小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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