こうして生まれたのが、各方面で「中身が気になりすぎる」と話題になった“毒出し日課帳”だ。

「やっぱり『口に出す』とか『ノートに書く』とか、ささやかでも“外に出してく”ことが大切だと思います。頭ん中でそれをやっても、自家中毒的になって落ちていくだけなんで。子どもっぽくて馬鹿らしいと思うかもしれないけど、僕なんて本当に『バーカ! バーカ!』って言いながら、ノートに書き殴ってますよ」

 頭の中で嫌なヤツのことを考え続けるというのは、どしゃぶりの雨の中で傘も差さずに雨雲を見上げているのと同じことかもしれない。当然、雨雲は消えずに打たれっぱなしだ。だから、山里さんは体を動かす。傘を買うのか、雨宿りできる家を見つけるのか、具体的に考える。具体的に考えるから、進むべき道が決まる。その瞬間、冷たい雨は、自分を前に進ませるためのガソリンに変わっている。

「僕が心の叫びをノートに書き殴るようになったのは、2004年にM-1グランプリで準優勝して、テレビとかに呼んでもらえるようになった頃です。そのときは右も左もわからない状態で、『すみません』と『ごめんなさい』が口癖でした」

 一時期は、芸人を辞めることも本気で考えていた。しかし今は、その強烈な劣等感こそが、山里さんを突き動かす原動力になっている。

「ほら、映画の『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』ってわかります?」

 自分のイメージを、山里さんらしい「変換」で、こう表現してくれた。

「ドク博士が作ったタイムマシンの『デロリアン』は、バナナの皮とか紙くずみたいなゴミを燃料にして走るんです。僕もあんな感じが理想ですね」

(取材・文/澤田憲)