佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
母校の中学校から講演依頼が…妻の一言とは?(※イメージ写真)
母校の中学校から講演依頼が…妻の一言とは?(※イメージ写真)

 個性派俳優、佐藤二朗さんによる「AERA dot.」の新連載「こんな大人でも大丈夫?」。日々の仕事や生活の中で感じているジローイズムをお届けします。

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 暑さに弱く、寒さに弱いという面倒体質の俺だが、他にも弱いものが数多ある。静電気に弱く、ジェットコースターに弱く、お化け屋敷に弱く、高いところに弱く、方向感覚に弱く、虫に弱く、妻に弱い。

 ちょっとこれでは情けなさ過ぎると思い、わりと真剣に「俺は何に対してなら強いか」を小一時間考えたが全く思い付かず、考えるのをやめたこともある。以前そんな内容をツイートしたら、「二朗さん、酒に強いじゃないですか……強くないか」とリプをくれたのは友人の故・前田健だった。そう。お酒は好きだが、別に強くはない。すぐ、ふにゃける。酒だけでなく、寒いとふにゃけ、暑いとふにゃけ、お化け屋敷にふにゃけ、虫にふにゃける。ゴキブリが出ようものなら、ふにゃふにゃになる。まさに「ふにゃけ人生」なのだ。

 母校の中学校から講演依頼が来た。ミスターふにゃけの名をほしいままにする俺としては、全く講演なんて柄ではないし、人様の前で語れることなど何もないのでお断りしようと思ったが、今は地元の町役場に勤める幼なじみからの依頼ということもあり、郷里への恩返しのつもりでお受けすることにした。

「中学生に教えられることなんてあるの? アンタ」と妻に聞かれた。「こんな大人でもなんとか生きていける、ってことを教えるんだよ」と半ば不貞腐れながら答えると、妻は笑って呆れて少しだけ納得したようだった。

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佐藤二朗

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佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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