寝室の温度については、アメリカ睡眠財団は18〜19℃を推奨しています。温度を厳密に測る必要はありませんが、体温がスムーズに下がるよう、少し涼しいくらいがよいと思います。息子が3、4カ月だった頃は、エアコンを付けて寝ると風邪を引くんじゃないかとか心配するあまり汗びっしょりにさせてしまっていましたが、赤ちゃんは暑いのが苦手です。風が当たらないように調整して、エアコンを付けてあげたほうが良いでしょう。とはいえ、日本の夏に、室温を19℃まで下げるというのは現実的ではありませんね。クーラーの設定温度は26~27℃くらいにして、パジャマを夏用の薄いものにするなど、暑くならないよう調節してあげるとよいでしょう。

 また、日が長いこの時期は、早朝に寝室が明るくなってしまいます。光は睡眠を浅くする効果があり、明るい寝室で眠ると、目を覚ましやすくなります。1981年に奈良女子大学の研究者たちが行った研究では、3人の女性に、様々な暗さに調節した部屋で寝てもらい、その間の脳波を測定しました。その結果、寝室の明るさが30ルクス以上になると、特に起床前2時間の睡眠が浅くなることがわかりました。2013年に韓国で行われた研究でも、4人の女性を対象に、40ルクスのライトをつけた場合とつけない場合での睡眠深度を測定しています。その結果、ライトがついていないグループとついているグループでは、ステージ1の浅い睡眠がそれぞれ8.6%と10.2%、ステージ3・4の深い睡眠がそれぞれ15.1%と11.3%となり、やはり睡眠が浅くなることがわかりました。

 30ルクスというのは、なかなか言葉で伝えるのは難しいですが、物影がうっすら見える程度、間接照明がついた薄暗い寝室、くらいの明るさのようです。その程度の明るさでも、睡眠が浅くなってしまうのですね。日当たりの良い部屋だと、遮光カーテンをつけていても、朝方はそのくらいの明るさにはなってしまうと思います。遮光カーテンは1級遮光のものを使い、カーテンの上下左右から漏れる光もふさぎましょう。それでもだめなら、完全遮光の窓用シートを使うのもおすすめです。

 温度と光に注意して、夏も快適な睡眠をとりましょう。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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