ダサさを感じさせる要素は、メンバーのファッションやユーロビート調の音楽、そして何よりも歌詞の内容である。「U.S.A.」というタイトル通りに、アメリカ文化に対する素朴な憧れをテーマにしているのだが、言葉選びのセンスが絶妙だ。

「リーゼントヘア真似した」「ツイスト踊ったフロア」など、登場するアメリカのイメージがやたらとステレオタイプで古臭い。日本とアメリカの関係について「どっちかの夜は昼間」と歌う一節も当たり前すぎて度肝を抜かれる。

 極めつけはサビの「C'mon, baby アメリカ」だ。アメリカのことを表現するのに「アメリカ」という単語をそのまま連呼するというのは、ありそうでなかった「言葉の革命」である。

 どこか間が抜けているようにも見えるが、その分だけこの歌詞には軽さがあって、押し付けがましくない。この曲で歌われているのは「ドナルド・トランプのアメリカ」でもなければ「銃社会アメリカ」でもなく、純粋無垢な憧れの対象としての「アメリカ」である。

 米軍基地のある沖縄出身のISSAがこれを歌っていても、そこに政治的な主張は一切感じられない。ギスギスしがちな昨今のネット社会では、その軽妙さもより魅力的に感じられる。

 もちろん、この曲は間抜けな歌詞で笑わせることだけが目的のコミックソングではない。圧倒的な歌唱力とダンスの上手さによって、細部に渡るまでパフォーマンスが完璧に仕上がっているからこそ、歌詞の間抜けさが際立って面白く感じられるのである。

「ダサい」と「かっこいい」は両立不可能なものではない。スイカに塩をかけると甘みが増すように、DA PUMPは時代錯誤な「ダサさ」をあえて積極的に取り入れることで、現代に通用する「かっこよさ」を生み出すことに成功したのだ。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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