「人間は人に会った瞬間、0.1秒くらいで脳の扁桃体が『なんかいい』『なんかいやだ』という判断をします。自分から相手に思いきりの笑顔を見せることによって、相手の脳に一瞬で『あ、なんかいい人かも』とスイッチが入ります。だから、この0.1秒を逃してはいけません」

 なるほど、それで0.1秒か。思いきり笑顔は先手必勝。躊躇してはいけないのだ。

「相手の顔色は一切読んではいけません。自分主導で相手の脳にある好かれるスイッチを一気に入れにいくので、『機嫌が悪そうだな』『怖そうだな』など相手の気分で自分を変えてはいけない。なぜならそれが出会いの瞬間だから。脳は一瞬で判断します」

 人は感情が行動に繋がる。会った瞬間にこの人感じがいいなと思えば話を聞くし、財布も開きやすい。嫌いな人とは2度と会いたくない。だから、「この方法で人の感情をうまく引き出せれば、営業担当なら成績アップに繋がる」というわけだ。

 続いては、二人一組で、一人が30秒間「ニーッ」と笑顔をキープ。もう一人はその人の笑顔がさらに続くように応援する。相手を鼓舞し続けるのだ。なぜ応援が必要なのか。

「この研修のポイントは、自分の表現を変えることによって相手が嬉しい、楽しい、面白いと感情を動かし、行動を変えさせることです。応援を小さくやってしまうと、周りと見比べて『私は嫌われてるんじゃないかしら?』と思ってしまう。やり過ぎくらいやると相手は喜ぶ。良い感情を持つ。そうすると次から対応が優しくなるんです」

「返事の仕方」は声のトーン、体の向き、すぐの反応と3つのポイントから良い例と悪い例を受講者同士で体験させ、実感させていく。研修が進むほど、参加者の声が大きくなり笑顔が弾けるように。シンとしていた会議室が明るくなっていく。

 柳沼さんは笑顔の維持のために、朝起きた時、ランチ後、寝る前の1日3回、ありとあらゆるところで笑顔をチェックすることを勧めた。

「油断すると顔が戻っちゃいますので、いつも筋肉をあげるようにして笑顔で仕事をしてみてください。笑顔は体の状態が良くなるので、良い判断ができ良い企画が生まれ良い文章が書けるようになり、スピードも早くなると思います。会社の中で思いきりの笑顔が広がることで、気持ちよく仕事ができると思いますよ」

 拍手で互いを労い研修は終了。参加者は全員素敵な笑顔になっていた。営業担当の入社1年目の男性は「自分が細胞レベルで一新されました」と満面の笑顔を浮かべ、入社2年目の男性は「この研修が去年あったら」と残念がった。管理職の面々も「全然印象が違うね」「やってみないとわからないね」とその効果に驚いていた。

 笑顔を向けられて不快に思う人はいない。もし、なんとなく感じが悪い、人から好かれない、営業成績が上がらない……。そんな悩みを抱えているなら、試してみる価値はありそうだ。