そして、彼女たちを信用しているからこそ、今ではかなりの部分をメンバー自身に任せるようにしている。実際、ここしばらく、ツアーやソロコンなどのリハーサルに僕はあえて立ち合っていない。そうするようになったのは、いつからだったか。

 今思えば、2014年の国立競技場公演のエンディングの挨拶を彼女たちに任せたことが、大きなターニングポイントだった。事前に考えておいた台詞ではなく、そのときそれぞれの心に浮かんだ言葉を、目の前のファンの皆さんに伝える──僕にとって、それこそがいちばん面白いことだと思ったし、いちばん見てみたいものだった。あの日、聖火台の上で百田夏菜子が自分で考え、自分の意思で口にした「笑顔の天下」という言葉が、その後のももクロの指針になっているのだから、これはもう彼女たちが切り拓いた道である。

 むしろ、周りのスタッフがもっと気を引き締めなくてはいけない。少しでも気が緩んでいると、彼女たちが進む道を邪魔することになりかねない。10周年を迎えた今、より強くそう思うようになってきた。

 だから周りの人間たちは、いい意味で「元に戻す」作業に取り組んでいるところだ。忘れてしまいがちな原点を思い出す。「大事にすべきこと」を徹底する。それは当たり前のことではあるけれど、高いレベルで闘っている彼女たちと並走しながら「元に戻す」ことが重要なポイント。スタッフは死ぬ気で4人についていかなくてはいけない。

 まだ6人で活動しているとき、僕はメンバーを集めてこんなことを言った。

「最年少のあーりんが20歳になるころに、あなたたちをトップの位置に持っていきます」

 芸能界は難しい世界で、5年後どころか、1年後のことすら予測がつかない。世の中の流れにも大きく左右されるので、全く先は読めないけれど、僕はその約束を守れるようにマネージメントしてきたつもりだ。長いスパンで彼女たちの人生を考えたとき、20歳前後でトップに立つことで、そこから先、やれることが増えていくはずだから。

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マネージャーが感じるメンバーの成長…