著者の砂川秀樹さん。「カミングアウトをする、しない問わず受け入れられる社会的雰囲気になれば」と願う(撮影・福井しほ)
著者の砂川秀樹さん。「カミングアウトをする、しない問わず受け入れられる社会的雰囲気になれば」と願う(撮影・福井しほ)

 最近、芸能人の「カミングアウト」が増えている。「実は私の二重は整形です」、「恋愛禁止だったけど、当時恋人がいました」。誰かが何かを告白するたび、ネットニュースの見出しはにぎわう。

 ただ、日本での「カミングアウト」という言葉が「本来の意味合いとは少し異なる使われ方になっている」と指摘するのは、文化人類学者の砂川秀樹さんだ。性的少数者の理解推進を目指すイベント「東京プライドパレード」の前身「東京レズビアン&ゲイパレード」の実行委員長の経験がある砂川さんは、自著『カミングアウト』(朝日新聞出版)のなかで、「(日本では)誰かに対してこれまで話していなかった自分に関することを伝えること、特に、相手が予想していないようなことを伝えるという広い意味で使われている」と記述する一方で、「もともと英語のカムアウト/カミングアウトは、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)などが、自分の性的指向や性自認について誰かに伝えることを指す言葉」とも記している。著者の砂川さんに改めて「カミングアウト」について話を聞いた。

*  *  *

――「カミングアウト」という言葉にどんなイメージを持っていますか。

 私のようにLGBTの啓発活動をしている人は自らオープンにしていたり、オープンにしていなくても「いつかできたらいいな」と思いながら活動していたりする人は多くいます。一方で、そうではない人たちの中には、ネガティブにとらえているケースもあります。「LGBT」という言葉がオープンになって、「世間的な雰囲気は肯定的になっている」と言われることが増えました。ですが、実は、当事者の中にはそれをプレッシャーに感じている人も多いんです。カミングアウトをテーマにするときはいつも迷いというか、ネガティブな感情を刺激してしまうのではという不安もあるのです。

――ネガティブな感情?

 単純に「カミングアウトすればいい」というシンプルなとらえられ方はされたくない。(友人同士、親子など)関係性によっては「する」「しない」の選択はあると思っています。なので、すべての人に単純にすすめているわけではありません。ただ、それを受け入れやすいという社会的な雰囲気を作りたいという気持ちはあります。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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「異性愛者はカミングアウトしないのに」という言葉には