年々規模が大きくなるにつれていろんな企業だったり、当事者じゃない人も参加してくれるようになりました。ただ、パレードが盛り上がっている一方で、LGBTイシュー全体としては「問題」が残されています。

――どういった問題ですか?

 パレードの充実ぶりに比べると、LGBTを支援する側の運動はまだまだ発揮できていません。パレードの規模が大きくなっても、実際にメンタル面で悩みを抱えていて生きづらさを感じている人に、必要不可欠なサポートがなかなか届かないのです。そのギャップは気になりますね。メンタルの不調があると、つい仕事のストレスなどに理由を求めるんだけど、それ以前に根っこの部分で傷を負っているんです。もともと傷ついていたところが、より大きくなるというイメージです。

――無意識に傷ついている?

 自分が傷ついてきたことにすら気づかずに、大人になっている人も多い。たとえば、小さいときは「ホモだ」「おかまだ」という言葉を聞いて、ズキッと胸を痛める感覚があったかもしれない。だけど、大人になるにつれて徐々にそれをやり過ごせるようになってしまう。そうなると「自分はもう傷ついていないし、きっと大丈夫だ」って思っていたりする。でも、意外と傷ついたものは癒されないままのことが多い。それがメンタルの不調につながっていたりもする。

――今後、「カミングアウト」はどう移り変わっていくと思いますか。

 日本ではまだ親きょうだいへのカミングアウトは否定的にとらえられているけれど、伝えて理解されるということも少しずつ見えてきている。だんだんそこが変わっていくのかなと思っています。これまでは「ゲイである」「レズビアンである」という観点で見られていたけれど、だんだんと「パートナーとの関係性をどう認めてもらうか」という視点に変わってきています。内面的なアイデンティティの話ではなく、「パートナーである」という関係性が社会の中でどう認められ、シフトしていくのかなと思っています。(AERA dot. 編集部・福井しほ)

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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