今は過渡期ですかね。これまでも社会的に抑圧されていた人たちが解放されるときは、解放を目指して動く人と、それまでの状況でいたい人たちとで摩擦があったと思う。性的マイノリティに限らず、現状が変わることって誰もがどこか不安なんです。

――たとえば、どんな不安が?

「同性愛者は周りにいない」と思っていた人の認識が「周りにいる」となると、「じゃあ、うちの会社にもいる」となるわけじゃないですか。そういう意味では「オープンにしたくない」と思っている人にとっては不安だと思うんです。同性愛者であるということが異性愛者であるということと同じようにとらえられるようになれば、そういう風に「周りにいる」などと探し出されることもないと思う。

――なるほど。

 最近はSNSが発達したことで、同じ思いを持つ人とつながりやすくなりました。匿名でつながったり、一般に受け入れられやすくなったりしていると思います。その経験が積み重なれば、友達や家族にも伝えられるということにつながるかもしれませんね。ただ逆もあって、匿名は「攻撃」も受けやすい。

――攻撃?

 はい。うまく受け入れてくれる人と出会えればいいけど、ネット上ではマイノリティに対するいろんな憎悪があからさまになっている側面もあります。そこに触れてしまうとかえって傷ついてしまったり不安になってしまったりすることもあります。

――SNSの憎悪がすべてだと思い込んでしまうと怖いですね。

 そうなんです。匿名の人の憎悪を身近な人の反応と思ってほしくない。自分を否定してしまうのが一番つらいこと。世間一般でLGBTが話題になっている分、反発も目立つようになっています。そこを最初に見てほしくはありません。

■マイノリティだって、自分のことを受け入れるのに時間がかかる

――カミングアウトしたとき、相手が動揺してしまったら?

 ありえますよね。カミングアウトを受けた側は予期していなかったんでしょうね。解決の方法は2つ。まずは、諦める(笑)。

――潔いですね(笑)。

 きっと他にわかってくれる人はいますよ。で、もう1つは、もう一度話をすること。この人とちゃんと向き合いたいっていう思いがあるなら、もう一度話を持ち出すのも重要です。ただ、カミングアウトした側は「もう言えない」って思う人も多いはずだから、打ち明けられた側から話しかけてくれるほうが関係は深まるし、スムーズかな。二人の関係を続けるという意味では相互の努力が必要だと思います。

――諦めるか、もう一度向き合うか。

 でも、まあこれも関係によるんですけどね。諦めると言ったって、家族なら離れられないし、そんな簡単にはいかないじゃない。それはちょっと頑張らなきゃいけない場面もある。そもそもマイノリティは、自分のことを受け入れるだけで時間がかかるものです。それと同じで、言われた側も受け入れるのに時間が必要なことはある。カミングアウトしたときに「どうも受け入れられなかったらしい」と思うわけじゃない。でも、人は変わる可能性があるから、そのとき受け入れられなかったことが必ずしもずっと続くわけではないということは覚えておいてほしいですね。

――「東京プライドパレード」は昨年、来場者が10万人を超えました。

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パレードが盛り上がる裏側に残される課題