しばらく株式会社の保育所は増えなかったが、国を挙げての待機児童対策が行われ、ここ数年で急増した。営利企業の保育所は、2013年(10月1日時点)の488か所から2016年は1337カ所へ、社会福祉法人は、同年比で1万2839カ所から1万4049カ所へと増えている。新規開設の保育所では新卒採用を中心に人材が確保される。数年経てば結婚や妊娠の時期を迎えるため、「一度に妊娠しては困る」からと、「妊娠の順番」が囁かれることが目立ってきたと見ることができる。

 裕子さんら保育士は「私たちは子どもが好きで保育士になっている。それなのに、自分の子どもを産み育てることが悪いことのよう。これでは、保育士は続けられない」と訴える。東京都が2014年に行った「東京都保育士実態調査」では、保育士の退職理由(複数回答)で最も多かったのが「妊娠・出産」(25.7%)だった。保育士がワークライフバランスを図りながら就業継続するために、妊娠前の“マタハラ”についても目を向け、法制度を整える必要があるのではないか。

●プロフィール
小林美希(こばやし・みき)
1975年茨城県生まれ。神戸大学法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年よりフリーのジャーナリスト。2013年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 保育格差』(岩波新書)。

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小林美希

小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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