数少ない黒人内野手としてブルワーズなどで活躍したリッキー・ウィークス・ジュニアが、全盛期にそんな話をしていたことがあった。実際にNBAなどと比べると、MLBファッション性も高いとはいえず、スピード感にも欠け、黒人にとっては“クールではない”といった声も聴こえてくる。このウィークス、そして同じく黒人外野手としてメジャーでプレーしたトリイ・ハンターなどはオフに普及活動にも積極的に取り組んでいたが、最近の数字を見る限り、効果が出ていたとはいえない。だとすれば、近年の潮流通りに黒人のベースボール離れは進むのだろうか。

「例えば、NBAでのレブロン・ジェームズのような存在がMLBにも必要だ。そういったスーパースターがいれば、黒人の子供たちも自然と再びベースボールに興味を持つはずだからね」

 ヤンキースの大ベテラン左腕、CC・サバシアが筆者にそう語ってくれたことがある。黒人にとってのアイドル誕生ですべてが解決するわけではないが、助けにはなるだろう。ただ、このサバシア、 アンドルー・マカチェン(ジャイアンツ)、アダム・ジョーンズ(オリオールズ)、カーティス・グランダーソン(ブルージェイズ)のような黒人のビッグネームは、現在やや下り坂の選手が多い。アーロン・ジャッジ(ヤンキース)のような黒人と白人のハーフのライジングスター以外に、黒人たちが心底から偶像視できるスーパースターの誕生が待たれるところかもしれない。(文・杉浦大介)