西部邁さん (c)朝日新聞社
西部邁さん (c)朝日新聞社

 評論家の西部邁さん(享年78)の自殺を助けた自殺幇助の疑いで東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の子会社の社員ら2人が5日、逮捕された。西部さんの長女、智子さんは本誌の取材にこう語った。

「自分たちのために本当に申し訳ないことをさせてしまいました。(父は)自殺ということで片付くのではないかと思っていたのではないかと思います」

 警視庁に5日、逮捕されたのは、窪田哲学(45)、青山忠司(54)容疑者の2容疑者。

 窪田容疑者はMXテレビの子会社「MXエンターテインメント」の社員で西部氏が出演する番組のプロデューサーだった。4月24日に予定されている西部氏を忍ぶ会のまとめ役もしていた。警視庁は同日、同社を捜索し、裏付けを進めている。

 一方、青山容疑者は20年来の親交があり、西部氏が主宰する私塾の塾頭だったという。2人は1月21日に西部氏を東京都大田区の多摩川に連れていき、西部さんの体をロープを使うなどして川に入水させ、自殺を助けたとされる。智子さんが申し訳なさそうに語る。

「父が頼んだことだと思いますので、断って頂ければ良かった……。父のために申し訳ないことをさせてしまった。報道で顔も名前も出てしまって……」

 少し前から自殺を助けた協力者がいるのではないかという話が出て、メディアに邪推されることに困っていたという。

「両手が縛られていたなんてことが報道されていましたけれど、もし本当にそうなら最初から自殺とは出ないはず。そんな間違った報道が出るので本当に困っていました」

 西部氏は安らかな死に顔だったとして、智子さんはこう話した。

「父の死に顔はおやすみなさい、と言った時とまったく一緒で、本人は満足していて死んだようです。遺書にしても警察あての遺書もわざわざ書いていた。自殺だということになるんじゃないかと本人は思っていたでしょうから、今頃、『まったくなぁ』と思っているんじゃないでしょうか」

 警視庁などによると、2人は容疑を認めているという。(ジャーナリスト・桐島瞬)