■MBAでの落ちこぼれを救ってくれた「特技」

 ところが、紆余(うよ)曲折を経てビジネスクールにたどり着いた元フリーターの私と違い、周りは大企業エリートやら起業家やらで名刺交換すら気後れするような人ばかり……。

 入学した瞬間に退学が頭をよぎりましたが、ここで尻尾を巻いて逃げたところで、振り込んだ学費は戻ってきません。ならば、学費の元を取るために、死ぬ気で勉強をしなければ!

 そうこうするうちに、勉強したことを得意のイラストに落とし込めれば、1ミリでも多く脳のシワに刻み込まれ、実践にも繋がる!ということに気づき、「MBA×イラストスタイル」で復習ノートを作ることに成功し、密かにファンとして応援してくれる人もできました。

 しかし、いくらファンからの熱い要望があっても、会計・ファイナンスというカネ系科目だけはどうにもこうにもイラスト図解するところまで理解を落とし込めませんでした。

 そもそもビジネススクールの会計の授業は、決算書を読み込み、数字の矛盾を指摘し、会社の経営の問題点を探ったり改善案を考えたりするもの。でもそれって、スケート靴を履いたことのない私にトリプルアクセルを跳べというくらい無茶なことなのです。

 なんとか基礎知識だけでもざっくり理解できるように……と漫画を探しましたが、今ほどネット通販の利便性も高くなく、ビジネス漫画も多くない時代でしたので、一冊しか見つけられません。すがるような気持ちでその一冊を読みましたが、「決算書の数字のウラを読み、会社の不正を暴く」というようなストーリー展開で、読めば読むほど私の脳はフリーズするばかりでした。

 決算書のオモテがわからない人間に、ウラの小細工など、理解できるわけがないのです。

 仕方ない。難しい本を読み込んで知識をつけるしかありません。バカでも猿でもわかる入社一年目からの会計本を何度も読み、授業の予復習は賢い人たちの後を金魚のフンになって追いかけ、手を動かし、エクセルで何度も変なエラーを出し、レポートで3.5点(10点満点)という単位ギリギリの数字を記録しながら、並行して受講していた他の経営科目の理解が進んだことで、やっと会計というものがわかるようになりました。

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