中日・松坂大輔 (c)朝日新聞社
中日・松坂大輔 (c)朝日新聞社

 ナゴヤドームは、オープン戦の期間中には、基本的に5階席を開放しない。つまり、この場合だと、収容人員3万6650人から、マイナス1万人が“満員”となる。

 松坂大輔、2度目のオープン戦登板は、かつて自らがエースとして君臨した西武との一戦だった。その古巣には、今季から松井稼頭央が復帰していた。

 チームメートとして5年間、西武の黄金期を支えた2人はともにメジャーでのプレーを経て、日本に復帰した。松坂はソフトバンクから中日へ、松井は楽天から古巣・西武へ。2人が出会った1999年、松坂は18歳、松井は23歳。そこから19年という長い月日を経て、松坂は37歳になり、松井も42歳。若きスターだった2人は、いつしかベテランと呼ばれる年齢になった。それでも、今なお現役にこだわり、日本から米国、そして再び日本へと、その戦う舞台を移してきた2人が、2018年、名古屋で相まみえる―。

 3月14日、ナゴヤドーム。観客2万4417人。

 オープン戦、平日のデーゲーム。それでも、ナゴヤドームは“8割方”も埋まった。「こんなこと、平日であり得ませんよ」と中日の広報担当者が、記者席から確かめたその光景に、思わず目を丸くした。松坂大輔と松井稼頭央。2人の対決に、それほどまでにファンの注目が集まっていたのだ。

「ちょっとした演出だったんだけどね」

 そう語った西武・辻発彦監督が、メンバー表の「1番」に記したのは「松井」の名前だった。プレーボールがかかると同時に、2人が対峙する。3イニングを投げる予定の松坂と1打席でも多く当たるようにという、辻監督の粋な演出でもあった。

 きっと、真っすぐだ。
 きっと、振ってくる。

 その10日前のオープン戦初登板では「バランスが悪かったから」と、最初からセットポジションで投げた松坂の両手が、ぐっと真上に上がった。力強いワインドアップから投じられた初球は、139キロのストレート。1番打者は、チームメートたちに先発投手の球筋を見せるため、できるだけ粘り、球数を放らせる。そんなセオリーなど、この日ばかりはお構いなしだ。

「もうちょっとボールを見ていこうと思っていたんですけど、打席に入ると『行こう』と思って」

 松井も、いきなりのフルスイングで、松坂の全力投球に応えた。高く舞い上がった打球は、ライト・平田のグラブに収まった。

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感慨深い二人の対決