翌日、ゴルフを断ってかみさんと人間ドックを受けている病院へ。院長先生が不在で、急遽、循環器内科医の診察を受けました。心電図を撮ると医師が「心筋梗塞だ!」と叫んだ。救急車に乗せられて渋谷にある大学病院へ。そこに偶然居合わせたのが、心筋梗塞の患者にカテーテル治療をし終えたばかりの医師たち。発症してすでに、16時間以上経過していましたから生存率は40%ほどでしたし、かみさんはもしものときのために承諾書を書きましたし。

 でもね、僕はそうは思わなかった。部分麻酔なので、カテーテル治療のさまが見える。先生も「これが血管ですよ」と教えてくれたりして。最初、その血管は霧の中にある枝葉のように見えました……まるで深い森に濃い霧がかかっているかのよう。それが治療をするにつれて、霧が晴れてきた。自分の毛細血管の先まで見えるようになったもんだから「これで大丈夫だ」と確信しました。

■僕にとってたばこは嗜好品ではなく必需品

 僕は愛煙家の代表。当時はたばこを1日100本以上吸っていた。うちは、おやじが103歳、おふくろが93歳まで生きたので、「長寿の家系だ」と。多少のことをしても、長寿のDNAがあれば大丈夫だと自分にいい聞かせていたわけです。

 健康の秘訣は?と聞かれると「健康の秘訣という、その質問自体が不健康だ!」と言っていた。でも倒れてみたら、不摂生の塊でした。医師から言われたのは「本当に危なかった。助かった理由は、奥さんが水を飲ませたから」。大量に飲むことで詰まった血管が少し開き、血液が流れたという。それからですよ。まあ、それまでも力関係はかみさんが上だったんですけれども、ますますわが家の女王になりまして。頭が上がらない(笑い)。

(構成・文/長谷川拓美)

※週刊朝日増刊「朝日脳活マガジン ハレやか 2018年4月2日号」から抜粋

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